文責:多摩ニュータウン・まちづくり専門家会議 秋元孝夫
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0.はじめに |
賃貸住宅団地では“住まう側”からの意見はなく、
“団地再生”すべき地区であるにもかかわらず、その展開は見えない。
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多摩ニュータウンにある団地は多様で居住者の立場も異なるため、一様に“団地再生”という議論に“住まう側”の意見が反映できないと言う背景がある。とりわけ公的賃貸住宅団地においてはその傾向が強い。東京都が管理する都営団地(公営住宅)、UR都市機構(公団賃貸)の賃貸団地それに東京都住宅供給公社(都公社)の賃貸団地が新住宅市街地開発法の下で整備されてきた。これらの公的賃貸住宅の居住者は自ら居住する団地の問題に対して発言しにくい状況がある。意見を出すとすれば“家賃値上げ反対”
の運動か“住戸内のトラブル”の報告で、居住の仕組みそのものに改善を求めることには至らないのが常である。一方、分譲団地では管理組合が形成され、建替や改善に自主的な団地管理を通じて自らの意見を出すことも多くなる。
こうした多様な多摩ニュータウンであるが、開発初期の一時期に集中的に供給された地区がある。10ヘクタールを超える大規模区画に50平方メートル前後の小面積住戸の大量供給であったことに起因して“団地再生”が緊急課題の団地群として国も地域も認めている多摩市諏訪永山地区である。すでに分譲団地では優良建築物整備事業として国の支援を受け建替事業を推進させており、住まい手が責任を持って全面建替を進めている。しかし、賃貸住宅団地では“住まう側”からの意見はなく、“団地再生”すべき地区であるにもかかわらず、その展開は見えない。
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