2.公的賃貸住宅のもたらす幸不幸 |
都営住宅では単身世帯の入居が可能になる60歳以降で人口が急増しており、
都内各所から低家賃を求めて集まっていると思われる。
つまり都内からの“姥捨て山”化しているのだ。
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都市機構の賃貸住宅と都営住宅との家賃格差を同一面積住戸で比較すると、35平方メートル台の機構家賃が4.5万円とすると都営住宅は概ね1万円以下になると思われ、その差は3.5万円である。建物仕様は同様であることから、都営住宅に入居できた場合は家賃の差額分が生活費として利用できることになる。そこで都市機構の賃貸住宅に居住している世帯から都営住宅に移りたいという希望が生まれる。これは賃貸人としては普通の意識であり、年金生活の高齢者等には決して矛盾を感じる隙間などない希望であり救いなのである。従って都営住宅は常に満杯であり、空き住戸が生まれたら高齢者が集中する。
今後の住まいについて
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(機構賃貸:永山団地居住者アンケートより)
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平成20年の機構住宅の家賃上昇は据え置かれたが市場家賃をベースに家賃設定される機構賃貸と、貯蓄の多寡には関係なく所得が無ければ家賃も下がる仕組みの公営住宅とでは家賃格差は歴然としていて、それが隣接している諏訪永山地区での矛盾は抗しきれない地域の課題として根強く存在していている。こういう状況に対して改善の方法はどうあるべきなのか、居住者だけでは解決しない事柄である。
この状況は平成12年と17年の国勢調査データで比較してみると明らかで、都営住宅では単身世帯の入居が可能になる60歳以降で人口が急増しており、転入があることがわかる。これらの転入者は隣接の機構賃貸に居住する高齢者の転居希望はあるのだが、実態は都営住宅であることから都内各所から低家賃を求めて集まっていると思われる。つまり都内からの“姥捨て山”化しているのだ。同様に機構賃貸住宅についても高齢者が増加しており、65歳を越えた居住者の転入が顕在化している。この現象については地域に居住する親族が機構賃貸に呼び寄せている結果ではないかと推測できる。中でも都市機構が積極的に推進している高齢者優良賃貸住宅改善事業は、結果として高齢者の呼び込みに寄与しているという、皮肉な結果を生んでいる。
諏訪4,5丁目(都営住宅)と永山4丁目(UR賃貸)との年齢別人口比較
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(国勢調査より)
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このように供給されたストックは画一化で多様な世帯を受け入れることができないが、実態としては家賃の安さが求められ、単身の高齢者が集中してしまう構図となっている。とりわけ高齢者にとっては都営住宅は魅力的で、エレベーターの設置されている住棟では生涯居住が可能な住まいとして重宝がられる結果となっている。住戸は狭くても低家賃で住み続けることが可能なので、必然的に高齢者が集中する。実態としても多摩市の中で諏訪永山には単身高齢者が集積しており、こうした状況を問題視する疑問は“住まう側”からは顕在化しない。
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