多摩ニュータウン
多摩ニュータウン・まちづくり専門家会議
E-mail


まちせんトップ

木曜サロン

記録・報告

2022年11月
2022年09月
2022年07月
2022年05月
2022年03月
2022年01月
...more

第163回(2022年11月17日)

■テーマ:「今夏リニューアルオープンしたパルテノン多摩の概要と今後の運営について」
■講師: 垣内敬太(かきうち けいた)さん(多摩市くらしと文化部 文化・生涯学習推進課主査 )

垣内さんは、6年間の民間企業勤務から平成24年に多摩市役所に入庁、環境部で2年半従事した後、くらしと文化部に異動され多摩市文化振興財団へ出向、5年間パルテノン多摩の施設運営に携わってこられました。その後、くらしと文化部文化・生涯学習推進課で、パルテノン多摩の運営に関する業務や再開館に向けた準備業務、文化条例などを担当されています。

パルテノン多摩は、昭和62年の開館から30年が経過し、老朽化が課題となっていましたが、平成28年から大規模改修に向けて、基本計画委員会、周辺施設整備等特別委員会、ワークショップ等により市民・市議会・行政・専門家が様々な議論を重ね、令和2年6月に工事着手、令和4年7月1日にグランドオープンを迎えました。

今回は、大規模改修事業の理念・基本方針やリニューアルのポイント、さらに今後の管理運営のポイントなどについてお話ししていただきました。

大規模改修は「文化芸術を通して、みんなが喜び、つながり、まちの魅力を創造する」を基本理念に、「@豊かな文化芸術を、鑑賞し・創造する楽しさや喜びを実感する場所づくり、A文化芸術を通した新しい広場・まちの広場づくり、B多様な人々が集い、交流し、賑わうことを通し、未来に向けた地域づくり」を基本方針としています。

改修の主な項目は、(1)劣化改修、(2)安全性向上(現行法規への適合)、(3)バリアフリー化、(4)標準性能の確保、(5)機能及び利便性の向上の5点です。

施設構成は、大ホール(1154席)、小ホール(269席)のほか、オープンスタジオを設けています。貸室には、会議室や市民ギャラリーのほか、クリエイティブ・ラボ、キッチンラボ・クラフトラボを新しく設けました。その他施設にはこどもひろばOLIVE、カフェ・ライブラリーラウンジ、ロビー・ミュージアムがあります。総事業費は80億円(工事費70億円、その他費用10億円)でした。

リニューアルの主なポイントとしては、多様な演目への対応や優れた音響性能を持つ大ホール、ホールの居心地・見易さの改善、大ホールへのエレベータ設置などのバリアフリー化、稼働率を高めるための諸室の用途変更、広いロビーや子供広場など多くの人を引き付ける広場空間の確保、身近に観て、聞けて、触れることのできる自動演奏楽器などがあげられます。

令和元年から3年にかけて、基本設計・改修工事と並行して、管理運営計画、施設条例の改正、管理基準等のルール作りや指定管理者の選定を進めてきました。運営体制はこれまで多摩市文化振興財団が指定管理者となって運営していましたが、文化振興財団と民間事業者3社の共同事業体が指定管理者となって運営する体制になりました。民間3社は主に、窓口・施設運営、施設の保全・清掃、舞台運営などを担っています。また、こどもひろばは子ども家庭支援センター(の委託業者)により運営し、市民もミュージアムにおける市民学芸員、市民研究員などにより運営に参加する体制となっています。

管理運営計画の主なポイントとしては次のような点があります。

・市民の優先利用や利用時間、連続利用期間の拡充、ロビー利用の緩和などの市民利用機会の拡充
・市内中学校の利用料金の減免、施設利用者登録の年齢条件の緩和、こども広場におけるフリースペースの運営など、子どもの利用機会拡充
・延長利用に伴う利用時間超過加算、営利目的利用の料金加算、物品販売等に対する加算、ホール以外の施設の任意の時間帯での利用を可能にするなど、今後30年間機能し続けるための財源の確保
・ライブラリーカフェや2階ロビーのフリースペース、オープンスタジオやワークショップルームなどの誰もがくつろげ、気軽に利用できる居場所づくり

パルテノン多摩のアート作品について、大ホールサブホワイエの壁画(「蒼湾へ」深井隆氏作)は存置しており、小ホールの壁画(「碧イ壁ハ風ノ椅子」中村錦平氏作)をオープンにして、楽しめるようにしています。従来の2階の造作家具を撤去する代わりに同じ作家(藤江和子氏)による造作家具を設置しました。また財団が所有する、1987年にキースへリングが多摩市を訪れたときに子供たちといっしょに製作した作品の活用も行っています。

パルテノン多摩の大規模改修事業と並行して、市民の創造性や豊かな感性を育むとともに、市民が心豊かに暮らせる地域社会の実現に寄与することを目的として「多摩市みんなの文化芸術条例」を制定しました。今年度から「文化芸術に関するビジョンの策定」を開始し、アンケート調査、ワークショップを令和5年1月から2月に実施し、それらを踏まえビジョンを策定します。令和6年にはビジョンを具体化するための施策を定める計画となっています。

意見交換では
・市民交流の仕組みや仕掛けづくりなど、うまくいっている点、うまくいっていないところなど
・中央公園や図書館などの周辺施設との連携や機能分担について、
・協議会としてのCMAの役割や機能について
・市内小中学校、コミュニティセンター、市民団体等との連携やパルテノン多摩が担うアウトリーチについて
・キースへリング作品の公開・展示、さらなる活用方法について
など、活発な意見交換ができました。

垣内さんには詳細な説明資料をご用意いただき、これまでの経緯や新生パルテノン多摩の目指す方向など、とてもよくわかりました。お忙しいところ大変ありがとうございました。

(2022.11.29[Tue]記載)


第162回(2022年9月15日)

■テーマ:「多摩センター・落合・鶴牧地区のパブリックアートについて」
■講師: 小林清(こばやし きよし)さん(トムハウス運営協議会まちづくり部長 )

小林さんは旧日本住宅公団の出身で埼京線各駅前地区、光が丘ニュータウン、晴海トリトン・スクエアなどの開発業務を担当してこられました。1975年から多摩ニュータウンに居住され、現在はトムハウス運営協議会まちづくり部の部長として地域に密着したまちづくり活動に携わっておられます。

トムハウスは、多摩市の鶴牧・落合・南野地区のコミュニティセンターですが、運営協議会の活動として「まちのたからものさがし」があり、地域内外のまち歩きを通じて様々な「たからもの」を見つけ、それをマップとしてまとめられています。小林さんは、『再発見することは、まちあるきの楽しみでもあり、地域の構造を知ることができ、防災などわがまちのまちづくりを考える基本でもあります。』とおっしゃっています。

多摩センター駅から落合、鶴牧にかけての地域は、先進的な郊外型まちづくりの例として、国内外で高い評価を得ていますが、空間デザインの一環として、美術家や造形作家の数多くの優れた作品が、当初から計画的に配置され、パブリック・アートの宝庫といえる状況にあります。これらのパブリック・アートが、住まい手やまちを訪れる方にうるおいや安らぎをもたらし、地域の価値を高める重要な役割を果たします。このような、まちかどにアートがあふれたまちづくりができたのは、旧住宅都市整備公団の発注者の思いと、受け手であるプランナーやコンサルタントの感性があったからです。

しかし、まちができて45年が経過するなかで、当初のまちづくりに向けた物語性や、携わってきた人たちの思いは風化し、後世の人たちに継承されないままになっています。また、時代とともにアート作品も毀損したり、盗難にあったり、補修の過程で陳腐なものに置き換わってしまったりということが同時に進行しつつあります。

そういう危機感もあり、2018年から4ヶ年をかけて、パブリックアートの現状や製作者を掘り起こし、製作意図を探りながら記録として残し、後世に伝えていくことができればという思いから、このガイドブックが作成されました。

ガイドブックの紹介は、小林さんの案内でガイドツアーをしているように感じられました。多摩センター駅に降り立ち、パルテノン大通り、パルテノン多摩屋上のきらめきのひろばをとおり、中央公園、宝野公園、奈良原公園、鶴牧東公園、鶴牧西公園と落合鶴牧地区の特徴である緑のリングを巡って、唐木田駅まで至る道筋です。

小林さんは、この地区のパブリックアートには、とんがったものや奇をてらったものはなく、やさしく語り掛ける野仏や庚申塔のような作品ばかりだとおっしゃっています。新しい伝説や言い伝えがはじまり、アート作品が身近なあだ名で呼ばれるようなふるさとづくりにしたいという、計画者やデザイナーの思いを感じるともおっしゃっています。
いくつか、個々のアート作品をご紹介します。

多摩センター駅を降りると、重厚なデザインのストリートファニチュア(街路灯、ベンチ、橋の手摺りなど)が目につきます。統一された鋳鉄製の素材を用い、耐久性やメンテナンスフリーに配慮したものになっています。

パルテノン大通りの床には全部で22枚の絵タイルがはめ込まれています。絵タイルは、世界の都市広場が描かれており、洋画家の渡辺豊重氏の4点の作品と旧公団の職員の人たちの作品だそうです。厚さ22センチの象嵌づくりという特殊な製法の有田焼磁器タイルでできています。残念ながら渡辺豊重氏の作品のうち2枚は毀損しモルタル塗りに置き換えられてしまっています。

パルテノンの大階段の屋上に登ると、ステンレスの大パーゴラの下に3枚の巨大なモザイクタイル画がはめ込まれています。全国から集まって住むニュータウンにちなみ、日本近海の北から南の海に棲む200種の魚類を描いた「日本魚類図譜」です。洋画家の古川清右氏の原画と氏の現場での制作指導により、イタリア産の色違いの天然色の大理石、30万ピースが組み込まれています。

パルテノンの屋上にはステンレスの列柱に囲まれた池のある「きらめきの広場」がありますが、その周囲には古代中国の神話にある天の四方の方角をつかさどる、四神獣をイメージしたゲートのオブジェがあります。青龍(東)、白虎(西)、朱雀(南)、玄武(北)と、そうだったのかと確かめながら見るのも面白いと思います。

鶴牧・落合地区は4つの近隣公園(宝野公園、奈良原公園、鶴牧東公園、鶴牧西公園)をリング状につないだ緑の空間が特徴ですが、その中には多くのパブリックアートがちりばめられています。なかには残念なエピソードもありますが、いくつか紹介します。

残念なものとして、奈良原公園の大きな花鉢の台座があります。当初直径80センチの大きなシャコガイの花鉢が設置されていましたが、ワシントン条約により取引が禁止され、希少価値となってしまったこともあり、設置直後に盗難に合い、固定ボルトのついた台座のみが残されています。

もう一つの残念なものに、宝野公園の2か所の時計塔があります。設置当初はデジタル時計を組み込んだコールテン鋼のオブジェでしたが、表面の黒錆で内部の腐食を防ぐというコールテン鋼の意味が理解されていなかったことから、時計の故障に伴い動物の時計塔に姿を変えてしまいました。

富士見通りには未完の彫刻台座があります。当初はブロンズ像を設置する予定だったものが取りやめとなり、台座のみ置かれています。これの有効活用を考えることは、ニュータウンに住む私たちにバトンを渡されているのかも知れません。

鶴牧東公園は通称「鶴牧山」と呼ばれ、関東平野を取り囲む山並みとニュータウンの全体を展望でき、初日の出や映画のロケなどに使われる名所となっています。鶴牧山の山頂にある大小二つの石は、「ドラキュラ親子の棺桶」と呼ばれ、”夕暮れになると棺桶を開けてドラキュラ親子が現れ、子供たちは早く家に帰りなさいという”、ニュータウンの都市伝説となって親しまれることを願っておかれました。

ほかにも、富士見通りの桜並木こしに富士山を展望できるガゼボ、鶴牧東公園のじゃぶじゃぶ池のシャコガイの台座とブロンズの鳥の彫刻、鶴牧第2公園の現代の富士塚など、興味深いものがたくさんあります。

鶴牧西公園は、雑木林を残した尾根を活かし、日本の農耕文化の継承をテーマにつくられています。ここには八木ヨシオワールドともいえるような、氏の作品がたくさん置かれています。果樹園を設けた斜面には、ところどころに水場があり、ブロンズの果樹のオブジェが置かれています。プレイロットには氏の得意とする石のオブジェがあり、氏は「ストーン」と名付けています。

唐木田駅前には、朝倉響子氏の連続作品「JILL」像の一つが置かれており、むかしの菖蒲田を偲ばせるデザインの駅舎のステンドグラスや絵タイルもあります。

最後に、誕生から成長過程を経て、新陳代謝を繰り返しているのが今のニュータウンであり、これから一部のマスコミで言われるようなオールドタウンにならないためには、どう新陳代謝をうまくやっていくかであり、自治体、住民、ニュータウン関係者の手腕にかかってくるとおっしゃっています。

また、一番貴重な「まちのたからもの」として「鶴牧山」を取り上げておられます。ニュータウンをとりまく周囲の環境の中でわがまちを見つめることのできる、視座としての場所であり、気持ちをリセットできる思索の視座でもあると評価されています。このような視座となる場所がニュータウンにつくられているということが大きな財産だといわれます。

今後のガイドブックを活用したトムハウスの事業としては勉強会やまち歩きなどが予定されています。なお、パブリックアートガイドブックは、トムハウスの窓口で、800円/冊で購入できます。ご紹介できなかった作品や、詳細な内容紹介はガイドブックでご覧いただき、ガイドブックを片手に、ぜひ歩いてみてください。

小林さん、とても楽しいパブリックアートのガイドツアーでした。ありがとうございました。

(2022.9.19[Mon]記載)


第161回(2022年7月21日)

■テーマ:「団地プロデュース型コミュニティ再生計画について 〜愛宕と松が谷でのコミュニティ形成と団地再生モデルの構築へ〜」
■講師: 渥美京子(あつみ きょうこ)さん(一般社団法人コミュニティネットワーク協会理事長)

渥美さんは専門誌の編集者や週刊誌記者などを経て、食や暮らしをテーマにノンフィクションライターとして活動されてきました。東日本大震災のあと福島の女性支援にかかわったことがきっかけで、一般社団法人コミュニティネットワーク協会へ、2019年から代表理事を務めておられます。

コミュニティネットワーク協会は、阪神淡路大震災の被災者支援をきっかけに1999年に設立され、様々な社会課題の解決を目指し、共生型のコミュニティの創生、安心して暮らし続けられる地域づくりを使命として活動されています。

過疎地の再生と大都市部のコミュニティづくりを事業の両輪として、これまでに手掛けられてきた事業をいくつかご紹介していただきました。

シニアのための住まいとコミュニティづくりを目的とした栃木県の「ゆいまーる那須」、さらにこれをきっかけに国の地方創生モデル事業を全国9自治体において支援。多摩市では「ゆいまーる中沢」、「ゆいまーる聖ヶ丘」の企画・マーケティング・入居者募集などを手がけられています。

「ゆいまーる高島平」は地域住民との参加型学習会を重ね、ニーズを具現化するために団地内に点在する空き室を利用した安心住まいづくりとして、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)と1階商店街の空き店舗でフロントと交流スペースを企画提案されています。
愛知県住宅供給公社の大曾根住宅(名古屋市)では、スーパー撤退後の空き店舗を活用した、子どもから障がい者、高齢者が共生する交流拠点を創出されていますが、住民・学者・専門家・事業者などで構成した「大曽根研究会」をベースに「大曽根で暮らし続けるしくみをつくる会」を立ち上げ、ニーズヒアリング、自治会と1年かけて信頼関係構築を進めてこられたそうです。これが松が谷のプロジェクトにもつながっているということです。

豊島区で2019年から手がけられている「空き家を活用した『としま福祉支援プロジェクト』」(国交省2019年度「住まい環境整備モデル事業」)は、空き家を活用したセーフティネット住宅と居住支援のしくみづくりが特徴です。セーフティネット専用住宅は、いろいろなニーズに対応できるようシェアハウス4室(共生ハウス西池袋)、ワンルーム6室(共生ハウス池袋2丁目)を用意し、住宅要配慮者に限定して貸しているそうです。池袋駅前には共生型の交流拠点「共生サロン南池袋」を、DIYやクラウドファウンディングなどにより最低限の費用で開設されています。共生サロン南池袋の働き手はセーフティネット住宅の居住者、障害者、生きづらさを抱える若者などであり、社会的弱者が社会的弱者を支える仕組みだといえます。

共生サロンの収支は、自主事業、介護保険事業、障害者事業の3つを組み合わせて、家賃・人件費・一般管理費などの支出をカバーできる仕組みがつくられています。
・自主事業=健康麻雀、卓球事業
・介護保険事業(総合事業通所型サービスB〜麻雀サロン、将棋サロン、他)
・障害者事業(就労継続支援B型事業所〜2つ目の交流拠点〜雑司ヶ谷)
この収支のしくみを松が谷プロジェクトでも生かしていくというこです。

松が谷の取組は「参加型コミュニティづくり」の実践ということであり、地域の住民の主体的な参加で拠点を作り、コミュティの輪を広げていこうというプロジェクトです。JKK(東京都住宅供給公社)所有の300坪のスーパー跡の空き店舗を交流拠点として再生するための公募に事業者として選考されました。同時に国交省の「住まい環境整備モデル事業」にも選定され、事業がスタートしました。国交省のモデル事業では、松が谷における社会実験の成果を多摩市域の愛宕地区で展開し、さらに地域のコミュニティ再生を担う人材育成のための「団地プロデューサー養成講座」も立ち上げられています。

2020年8月から、行政やキーとなる地域団体へのアプローチ、2021年2月から自治会や住民組織へのアプローチを行い、徐々にプロジェクトの浸透を図っていったということです。2021年3月14日に行われた第1回の住民説明会は、”ともに課題の解決を目指していきましょう”ということから、あえて白紙で臨んだそうですが、住民からは厳しい反発もあったようです。会を重ねるごとに、何とかしたいという当事者意識を持つ住民が集まってきて、事業が進んできたということです。

2021年3月から2022年6月にかけての毎月の住民参加型学習会では、子供や学生も含め多世代の方が30〜40名参加されたということです。その中で、健康マージャンやヨガ教室、料理教室をやってみたいという方たちも現れてきました。またスーパー跡の軒先を使った「英語によるコミュニケーション教室」や「焼き菓子販売のマルシェ」などの活動や、住民の自主的な地域産の竹を使った本棚づくりなどが行われてきました。

スーパー跡の建物の改修工事も建築の産直を目指して、神戸の大工集団Teamクラプトンの協力で、近隣の学生や子供、高齢者、障害者も参加し住民参加型のDIT(Do It Together)で行われました。

7月17日にオープニングイベントが開催されましたが、これの実行委員は大学生と地域住民のみなさんが担い、pr活動、出演者交渉などすべてを担ってこれたそうです。地場野菜の販売、商店街の肉・魚の販売、料理教室、コミュカフェ、学習塾によるアフタースクール、オリパラ元日本代表監督による卓球場、健康マージャンなどにぎやかに開催されたそうです。

松が谷では豊島の実践例を踏まえた持続可能な事業の取組が行われようとしています。自主授業で損益を成り立たせ、就労継続支援B型事業と会員制のデイサービス(介護保険を使わないデイサービス)を組み合わせるというものです。

本サロンの翌々日、7月23日に「共生型交流拠点in松が谷商店街 ”コミュニティプレイスまつまる”」がオープンしました。いよいよ本格始動です。早速出かけてみましたが、地域の皆さんがたくさん集まっておられ、各お店や事業者さんも生き生きと仕事されていました。

すでに、第2弾の愛宕プロジェクトも始まっています。愛宕第2住宅の旧みずほATMの空きスペースを賃貸し、週2回の店頭相談、市や公社も参加した住民参加型の学習会も行われています。

さらに、今後の展開として、愛宕で成功モデルをつくり、他地区に展開し、若い世代の居住や働く場を作り、介護の必要な方々への対策を充実すること。そのために山王下の22,000uの都有地を活用した拠点を作るなどの構想を持っておられるということです。

(2022.7.27[Wed]記載)


第160回(2022年5月19日)

■テーマ:「マンションの60年とこれからの展望 〜マンションに明るい未来はあるか〜」
■講師:飯田太郎(いいだたろう)さん((一社)マンションライフ継続支援協会(MALCA)相談役、(公財)まちみらい千代田顧問、月刊マンションタイムズ(不動産経済研究所)編集協力者等。マンション管理士)

飯田さんは、これまで広告やマーケティングの仕事でマンション関連の業務を手掛けてこられ、ご自身のマンション管理組合の理事長や修繕委員長も経験されています。今でもマンションライフ継続支援協会、まちみらい千代田などの団体で顧問を勤められ、月間マンションタイムズの編集など、マンションに関わる様々な分野で活躍されています。
今年は区分所有法の制定から60年となり、そのうちの50年をマンション関係の仕事に携わってこられた経験から、マンションのこれからと将来の可能性について考えたいということで、今回サロンで講演していただくことになりました。

飯田さんは、マンションの60年の歴史を6つの時期に区分し、それぞれの特色と時代背景について提示されました。これは今回のサロンに向けて、試行錯誤しながらいまでも悩みつつまとめられているということですが、大変有意義で興味深い分析ですので、簡単にご紹介します。

@黎明期(1955(S30)〜1971(S46))高度成長期におけるマンション建設ブーム
1955年に日本住宅公団が設立され新しい住型式、ニュータウン建設が始まる。1962年に区分所有法が制定されたが制度インフラは未整備。分譲業者、管理業者とも玉石混交。コーポラティブ方式によるマンション供給も登場。

A創世記(1972(S47)〜1981(S56))2度のオイルショックを経て安定成長に向かう時代
1972年の列島改造論に始まる第3次マンションブームの到来。その後、1972、1979年の2度のオイルショック。1976年には建築基準法が改正され日影規制や総合設計が制度化。1978年の宮城県沖地震を経験し1981年には新耐震基準ができる。

B定着期(1982(S57)〜1989(H元))バブル経済のもと地価高騰の時代
1982年中高層共同住宅標準管理規約の制定、1983年区分所有法改正でマンション管理は充実。一方地価高騰、マンション価格が年収の5倍を超える。地価監視区域制度や土地基本法が制定された。農住法が制定され、都市農地の活用や市街化区域内農地の宅地並み課税も議論された。

C発展期(1990(H2)〜1999(H11))バブル崩壊と地価暴落の時代
1990年代初めのバブル崩壊とともに不動産業界の不良債権が築盛、ディベロッパーの淘汰。マンション価格も低下し、マンション供給も増加。1995年には阪神淡路大震災により多くのマンションが被災し100棟超が建替え。一方、1993年には環境基本法が制定、1996年土地政策審議会答申による「所有から利用へ」の提言、1998年「21世紀の国土のグランドデザイン」など21世紀を目前に新しい取り組みの機運が生まれてきた。

D成熟期(半熟)(2000(H12)〜2009(H21))マンション管理の体系が充実していく時代
2000年住宅品質確保促進法、マンション管理適正化法、長期修繕ガイドライン、マンション建替え円滑化法、2001年マンション管理士法など、相次いでマンション管理の体系・法制度が充実した。一方、マンションへの信頼を損なう構造計算書偽造事件も発生。マンションストックは500万戸を超え、良好な住宅ストック形成への機運も芽生えてきたが、マンション事業は成熟に至らず「半熟」状態にあった。

E循環期(2010(H22)〜)少子・高齢化、人口減少に向かう時代
2011年東日本大震災、2016年には熊本地震と大規模地震が連続して発生。2020年改正マンション管理適正化法・建替え等円滑化法の制定。マンションを巡る二つの老い(高経年マンションの増加と居住者の高齢化)が議論されるようになり、マンションの建設から維持管理と再生にシフトするようになった。自治体やマンション当事者(ディベロッパー、管理会社、管理組合、管理士等)も対処の方向を模索中といった状態にある。

このようなマンションの歴史を振り返り、その過程で飯田さんが経験されてきた様々なできごとマンションとの関りなどもお話しいただきました。これらを踏まえ、これからの展望を次のように述べておられます。

「今後とも、よりよい住宅生活へのニーズは大きく、マンションはコンパクトなライフスタイルに適合し、かつ防災・減災にも優れている。区分所有者が維持管理の大変さを理解し、習慣づければ発展の可能性は大きい。これからタワーマンションの課題が本格化するようになると、維持管理や再生の認識が深まってくる。

また、関係人口(交流人口)の増加による2地域居住が広がっていけば、マンション型の居住も拡大するであろう。岸田内閣のデジタル田園都市構想を国土及び居住の在り方とリンクすることが重要。つぎはぎでつくられたマンションの総合法制化に期待したい。

マンションを供給と再生の循環型事業とするためには、公(計画性+秩序型)と民(野武士型エネルギー)の連携が必要。建替えに際しては公共の土地取得による定借マンションや公共施設との合築も考えられる。多摩ニュータウンは公・民の連携できる条件があり、新たな事業モデルが誕生する可能性を秘めている。」

お話の後の意見交換では、マンション管理の在り方や管理組合の抱える様々な課題について議論が交わされました。
飯田さん、ご苦労の後がうかがわれるマンションの歴史的な分類と考察、興味深いお話をありがとうございました。

(2022.5.23[Mon]記載)


第159回(2022年3月17日)

■ テーマ:「現役国家公務員が地域活動に飛び出してみた」〜地方自治の理論と実践〜
■講師: 小川大介(おがわ だいすけ)さん((一財)地方自治研究機構 調査研究室長)※総務省から出向

小川さんは総務省に勤務される現役の国家公務員で、現在は地方自治研究機構に出向されています。関東や九州各地を転勤され、多摩市に居を構えられて7年になるということです。

地域においては、多摩地域広域の自治体職員の勉強会「タマガワ・リーグ」や多摩市の若者会議のコアメンバーとして参加されるなど、多彩な活動をされています。今回のお話は、総務省という地方自治に係る様々なお仕事をされる国家公務員という立場で、自治体の地域活動にご参加される中で感じられたことをお聞きし、地方自治、住民自治とは何ぞやという素朴な疑問に対して議論を深めようというテーマです。

お話は、総務省の役割や地方自治、自治体戦略2040などから始まり、地方公務員の副業・兼業、多摩市の自治推進委員会や「地域委員会構想」について、そして小川さんが地域活動に関わるきっかけ・・・と大きなテーマから多摩市の具体的な自治政策や個人的な関りまで幅広い内容でした。

総務省は旧総務庁、自治省、郵政省の3省庁が統合された役所です。役割は旧省庁単位で分化されており、自治省系の業務は地方自治法、地方交付税法、地方税法に関わるもので、大半の業務が制度設計に関するもの(団体自治)であり、総務省職員は地方自治体への出向により自治体の実情を学ぶということだそうです。

地方自治は憲法の第8章に定められ、「団体自治」と「住民自治」の概念が規定されています。「団体自治」はいわゆる地方公共団体に関わること、「住民自治」は住民の政治参加、選挙権や直接請求権などに関わることということができます。住民に関わることは基礎自治体(市区町村)が担うものとされ、地方自治法では”地方公共団体の自主性及び自立性が十分に発揮されるようにしなければならない”と『市町村優先の原則』が謳われています。財政規模も地方自治体が約6割と国を上回っています。

国と地方の関係は主従ではなく役割分担が基本です。平成12年施行の地方分権一括法では、国と地方自治体は上下・主従の関係から対等な関係となり、機関委任事務(国の事務)が廃止され、これに伴い国の自治体に対する包括的な指揮監督権が廃止されました。

最近の地方自治に関わる話題として2点、一つは「自治体戦略2040構想」です。高齢者人口がピークとなるおおむね2040年頃に自治体が抱える行政課題を整理し、今後の自治体の在り方を展望し、課題解決に向けた対応策を検討しようとするものです。大変興味深いのですが、内容が多岐にわたり、奥深いものになっているので、ここではキーワードをいくつか紹介するにとどめます。

迫りくる我が国の内政上の危機とその対応として、@若者を吸収しながら老いていく東京圏と支え手を失う地方圏、A標準的な人生設計の消滅による雇用・教育の機能不全、Bスポンジ化する都市と朽ち果てるインフラの3点が指摘されています。

そして新たな自治体行政の基本的考え方として@スマート自治体への転換、A公共私によるくらしの維持、B圏域マネジメントと二層制の柔軟化、C東京圏のプラットフォームの4項目について提言されています。

さらに内容を知りたい方は、総務省の「自治体戦略2040研究会」のWebサイト(
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/jichitai2040/index.html
)をご覧になってください。

二つ目の話題として取り上げるのは「公務員の副業・兼業」ということです。地方公務員法では地方公務員の副業は許可制となっていますが、最近は地域社会のコーディネータとして公務以外の場で活動することが期待されるようになっています。神戸市をはじめとして先進的な自治体では、許可基準を明確にして社会貢献のための兼業を促進している自治体もあります。

兼業による社会貢献活動への参加を通じて、実際の公務にその経験や培われたスキルを活かすことが重要だと小川さんは言われます。小川さんは令和元年から多摩市自治推進委員会の副委員長として「地域委員会構想」に携わっておられます。「地域委員会」は多摩市がめざす「市民・地域と行政の協働のしくみづくり」を具現化するため、国の地域共生社会の実現(厚労省)、地域運営組織の形成(総務省)、公共私の連携(地方制度調査会)などの動きも踏まえて、住民自治を充実させていくための制度として考えられています。
地域委員会は、地域担当職員、地域福祉コーディネータ、中間支援組織から構成され、地域の中をつなぐためのプラットフォームづくりやプロジェクトごとの多様な活動を行い、地域における人材の掘り起こしや課題解決に向けた実践的活動を生み出していこうとするものです。

実際の活動においては中間支援組織の役割が重要となり、小川さんも関わっておられる多摩市若者会議は中間支援組織として活動しています。また、「多摩市エリアサポーター制度」として市職員が地域担当として関わり、地域の中での課題を把握し、プラットフォームをつなぐとともに、市役所内の縦割りの組織をつないでいく役割も期待されています。

小川さんが、地域活動に関わるようになったのは、住民自治を知りたいという建前とは別に、独身中年男性として孤立したくないと思っていたところに、自治大学校での自治体職員の方との研修がきっかけで、業務以外に学ぶ機会をつくりたいと思うようになったことだそうです。《人間関係のわらしべ長者》とスライドのタイトルに記載されていましたが、それからの活動は、タマガワ・リーグから多摩市職員の自主勉強会への参加、タマガワ・リーグの幹事メンバーとして活動していく中での人間関係の広がり、多摩市若者会議への参加とその中での様々な人との出会い、・・・と、まさに『人間関係のわらしべ長者』のようです。

地域活動を通じて感じたこととして、多摩市の人は暖かく自分以外のものに対する寛容性がある。国家公務員や都道府県職員は地域活動に参加すべきで、自分が住民として感じることを政策に反映すべき。多数決を原則とする民主主義から取り残される人、行政だけではカバーできない「ひとりひとりの幸福追求」に中間支援組織の役割が重要ということを挙げておられます。

最後に地域でこれから取り組んでいきたいこととして、若者会議で取り組んでいるストリートビュー撮影のドキュメンタリー映画づくり、アダプト制度を活用した遊歩道での野菜づくり、そして、地域で「幸せを繋ぐ人」、多摩市での講演な出会いの「恩送り」をやっていきたいそうです。

小川さん、多方面に渡る興味深いお話をありがとうございました。

(2022.3.22[Tue]記載)


Powered by HL-imgdiary Ver.3.00


永山ハウス
コーポラティブ住宅
(c)多摩ニュータウン・まちづくり専門家会議