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2025年01月分
■テーマ:多摩ニュータウンを「ゆるめる」 ■講師: 照井啓太(てるい けいた)さん(団地愛好家、地方公務員)
照井さんは無類の団地愛好家で、団地ファンサイト「公団ウォーカー」を20年以上運営しておられます。ご自身も神代団地に15年居住され、団地生活を満喫されておられます。高校2年生のころに団地に興味を持ち、写真を撮りまくっていたということで、これまでに『僕たちの大好きな団地—あのころ、団地はピカピカに新しかった! 』『団地ノ記憶』『団地の子どもたち 今蘇る、昭和30・40年代の記憶』(洋泉社)などの共著書があります。最近では、2018年に『日本 懐かし団地大全』(辰巳出版)が出版されています。 本日の話は、これまで数多くの団地を見てこられた、まだ30代の若い世代の照井さんに、多摩ニュータウンは外部の目からどう映っているのか、より、若い世代の人たちにニュータウンを理解し、住みたいと思ってもらうためには何が足りないのか、率直なご意見を伺いたいと思います。
●完成度が高く、非常にうまくつくりこまれているニュータウンだが・・・ まち全体に張り巡らされた歩行者専用道路、都内でも群を抜く公園の整備水準など、子供たちが自由に遊ぶことのできる街は他には見られません。居住地と商業地がうまくすみ分けられ、住区のまんなかに買い物の中心としての近隣センターが設けられていて、また住宅ストックは素晴らしいものがあります。 このような非常に完成度の高い街ですが、住民があたりまえと思っていることが、他の街にはない素晴らしい街だということを、もっと誇ってもいいと思います。多摩ニュータウンは、何かと外からは叩かれたり、批判されたりしますが、ニュータウン住民は謙虚すぎて、弱気になっているように思えます。 リクルートが毎年実施している「住みたい街ランキング」では、多摩ニュータウンは100位圏外だが、「愛されている街ランキング」では多摩市は都内で13位に位置しています。前者は20〜49歳がターゲットにしているが後者は自治体居住者を対象としています。 これが何を意味するのか、考えてみる必要があるのではないでしょうか。
●完成度が高すぎる堅すぎる多摩ニュータウンをゆるめる 完成度が高いとは、いいかえれば堅すぎるということでもあります。街中に張り巡らされた素晴らしい歩行者専用道路ですが、しっかりと作られた結果、道路法により管理されて、利用するにも道路占用許可が必要であり、厳しい条件のもとで様々な成約があります。 ・滝山団地では歩行者専用道路の道路法による管理を中心の3m程度として、両側を団地敷地として利用できるようにしています。その空間でキッチンカーが出店したり展示会などが行われています。
・狛江市では*「ほこみち」制度※1*を活用した、まちなかビアガーデンを実施しています。 ・川崎市のUR虹ヶ丘団地では、パナソニック、東急、URにより、自動配送ロボットや空中配送ロボットなどの実証実験「ソラカラ便」が実施されました。当初URの敷地内での実証実験だったものが、川崎市の協力を得て、遊歩道を横断して実施することができたそうです。 公園も多摩ニュータウンの主要な公園は都市公園法により管理されています。現在、多摩中央公園ではパークPFIにより民間を活用した公園の活用が進めれていますが、これがうまくいってニュータウンの公園にもっと広がっていってほしいものです。 ・調布市の神代団地ではURの管理広場でクリスマスマーケットなどのイベントを行っています。 ・世田谷の羽根木プレーパークは、子供たちが焚火をしたり木登りをしたり自由に遊べる公園ですが、40年の住民活動の中で生まれたものです。 鶴牧東公園の噴水のある広場(ジャブジャブ池)は好きな空間で、子供を連れて何度か遊びに来ていますが、近くに自販機もありません。このような場所にキッチンカーや自販機でもあれば、もっと楽しい場所にすることができます。 都市公園も管理者次第で楽しい空間にできます。管理者を動かすのは住民の思いです。住民の思いで、反対する人たちの心もゆるめられると思います。
●街の中心の「近隣センター」だが、名前からして堅すぎる 近隣センターも計算され計画されて作られており、時代の変化に柔軟に対応できないところがあります。昔のように魚屋、八百屋、肉屋などの立地は大規模店には太刀打ちできず、望めません。これからの商店街は個性的なお店が再生を促していくと思います。 ・花見川団地では、無印良品とのタイアップで商店街を含めた一帯のリノベーションを行い、通りにベンチや椅子をおいたりして、なんとなく行きたくなるような人が集まる楽しい空間にしています。 ・町田山崎団地ではぐりーんハウスという駄菓子屋を建築家の方が引き継ぎ、事務所を兼ねた駄菓子屋としたところ、子供たちも集まるにぎやかな場所になっています。その後クッキー、ラーメン、パン屋、アートのお店、ノンアルコールカクテルのおしゃれなお店など様々な業種・業態のお店が出店するようになっています。 ・花見川団地でも、商店街の1区画を「えがおの駄菓子屋」という店を学生が運営したりしていて、子供たちが集まっています。 商店街に駄菓子屋さんがあると子供たちが集まり、やがて大人も集まってきてにぎやかな空間になります。商店街でバーベキューをやってしまうような「ゆるさ」もあっていいと思います。お酒をおしゃれに飲めるような場所やお店もあるといいと思います。
●多摩ニュータウンには土地が十分にあるのでなんでもできそう・・ ・コンフォール茅ケ崎浜見平では、建替えに合わせて市の公園と民間施設をつなげ、民間施設の敷地の一部を公園と一体的な中間領域として整備しました。中間領域には遊具やファニチュアも置かれ、自由につかえる空間となっています。 永山団地商店街と隣接する永山南公園も似たような立地になっており、このような使い方ができる可能性があります。
・*南町田グランベリーパーク※2* は、ショッピング施設と鶴間公園がシームレスにつながっていて、商業施設でテイクアウトして鶴間公園で食事することもでき、公園には隣接してスヌーピーミュージアムがあったり、おしゃれな施設も設けられています。 このような空間の使い方は土地がなければできませんが、幸い多摩ニュータウンには十分な広さの土地があります。これを活用しない手はありません。
●どうやったらニュータウンをゆるめて楽しいまちに出来るか考えてみよう! 照井さんから、様々なアイデアの提案がありました。 ・サウナとか銭湯があったらいいな! ・遊歩道100mごとに自販機が欲しい! ・団地の中にキッチンガーデン! ・ペデストリアンデッキでビアガーデン! ・屋台がいっぱいあると楽しそう! ・遊歩道をスケボーコースに ・公園でキャンプしたい! ・近隣センターにスナックがあったら!
多摩市でも公園の使い方や、歩行者専用道路の利用などを市民と一緒に考え、実験するプロジェクトも動いています。近隣センターでは、若い世代の人たちがこれまでとは一味違う店舗の活用を始めています。 市民が自由な発想で、怖がらずに始めてみることが重要だと思いました。それとも、若い人たちはすでに始めているのかもしれません。 参加された方から、「私的に自由にまちを使う」ためのアイデアやノウハウが詰まった本の紹介もありました。 ⇒「PUBLIC HACK」(笹尾和宏著 学芸出版)
照井さん、お忙しいなか多摩ニュータウンに来ていただき、貴重なお話をありがとうございました。多岐にわたる内容で事例もたくさん紹介していただきましたが、つたないまとめで、十分に内容をお伝えできないことをご容赦ください。
*※1*「歩行者利便増進道路」(通称:ほこみち) 「道路空間を街の活性化に活用したい」「歩道にカフェやベンチを置いてゆっくり滞在できる空間にしたい」などのニーズに対し、道路空間の構築を行いやすくするため道路法等を改正して制度化された(令和2年) ⇒ https://www.mlit.go.jp/road/hokomichi/index.html
*※2 *「南町田グランベリーパーク」 東急田園都市線南町田駅、240店舗を超えるアウトレット複合商業施設や、スヌーピーミュージアムなどがあるパークライフ・サイト、多様なアクティビティが楽しめる鶴間公園など、さまざまな施設が融合したまち 鶴間公園は運動公園で、指定管理者「TSURUMAパークライフパートナーズ(株式会社石勝エクステリア、東急スポーツシステム株式会社、日本体育施設株式会社)」が管理・運営している ⇒ https://gbp.minamimachida-grandberrypark.com/townguide/
(2025.1.24[Fri]記載)
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