4.求められる官民共同の取り組み |
行政がリーダーシップを取り、官民共同の体制の中で
統括的な事業化を推進することが待たれている。
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“団地再生”を“住まう側”から求める機運は、居住者が自らの立場を理解し総意として意見をするかにあるが、現実的には居住者個々の声が既存の公的賃貸住宅制度の改革につながるものではない。むしろ居住者の取り組みは、現状の置かれた環境を住みやすくするためのけなげな努力であり、構造的な不幸を解決する手段にはなり得ないことを公共が理解して、“住まう側”と協働して取り組むべき課題である。
賃貸住宅の居住者は基本的に受け身であり、主体にはなり得ない位置にある。それを理解した上で、“大家”である東京都や都市機構が主体的に環境改善を考えなければ地域の課題解決にはなり得ない。しかし東京都や都市機構が、その管理する団地の部分である諏訪永山地区の問題に主体的な立場で課題解決に臨むことは難しい。そこで、その問題を地域の課題としてとらえるためには多摩市の役割が欠かせない。市民を抱える行政が居住施設についても主導的な立場でいることが必要になる。
言い換えれば、これは純粋に行政課題である。ひよわな市が東京都や都市機構を巻き込むことになり、行政にとっては発案者としての責任を取ることになるので、なかなか腰が上がらないのが本音であろう。しかし、このまま放置しておくことも出来ないとすれば、やはり主体的に動き、市民を身方につけながら“団地再生”の議論の場を作ることが必要になる。とはいえ継続的にその場を運営することは難しい。そこで“団地再生”の支援組織を作って事務局として、その組織を支える仕組みを推進するのである。もちろん「たま・まちせん」も市民団体として官民パートナーの一員として協力しようと考えている。
まずは、多摩市(行政)と東京都(公営住宅管理者)、そして都市機構(UR賃貸管理者)さらに分譲団地管理組合の団体を集合した“(仮)諏訪永山地区住まい運営委員会”を結成して、課題の共有と改善手法の検討を重ねることになる。将来的には多摩市のみならず、八王子市、稲城市、町田市を巻き込んだ組織として機能していくことになるが、まずは諏訪永山の問題解決の場として組織形成を進めることになる。
すでに組織化の準備期間は満了している。具体的な情報整理と課題はこれまでの多様な調査で浮かび上がっている。今後は現状課題に対して何から取り組むかであり、具体的施策の提案もエリアマネジメント調査などで整理されている。しかも現在も多様な調査が諏訪永山地区で行われている現状を受け、今まさに行政がリーダーシップを取り、官民共同の体制の中で統括的な事業化を推進することが待たれている。
幸い多摩市は15万人に満たないコンパクトな都市で、その7割が多摩ニュータウン住民である。だからこそ人口の18パーセントを占める諏訪永山の問題も、市民の身近な問題として取り上げることができる。そこが他の多摩ニュータウン関係市とは異なり、行政施策として先駆けることが可能であり、全国の同様な問題を抱える都市のモデルとして寄与することもできようと言うものである。多摩市及び多摩市民にとって、それが初めの一歩である。
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