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2020年01月分

第148回(2020年1月16日)

■テーマ:「私がなぜ放射能に30年向き合っているのか? 〜その理由〜」
■講師:小山貴弓(おやま きゆみ)さん(みんなのデータサイト事務局長、多摩市在住)

 今回は、長年放射能・原発問題に取り組んでおられる小山貴弓さんの話を聞きたいという会員の企画で実現しました。小山さんが原発や放射能に取り組むことになったのは、大学4年の時に起こった「チェルノブイリ原発事故」がきっかけだったそうです。就職を控え、企業で働くことで、何も知らないで社会に大きな影響を与えてしまうことに恐れを覚え、たまたま高木仁三郎氏の「いま自然をどうみるか」(白水社)を読んで、高木仁三郎氏を訪ねたことが始まりだったとのことです。高木仁三郎氏は核化学を専門とする物理学者で、地震の際の原発の危険性を予見し地震時の対策の必要性を訴えるなど、脱原発運動を象徴する人であり、小山さんの人生を決定づけた恩師だということです。

 1988年に高木氏の声かけで行われた「原発とめよう1万人行動」への参加、高木氏が校長を務める「反原発出前講師養成講座」を受講し反原発出前の店員となり、高木氏の勧めで、原発問題の講座講師を務める傍ら、エネルギー問題・再生可能エネルギーの普及活動にも携わることになります。

 福島原発事故の後、国会事故調・協力調査員として7か月間寝る時間もなくヒアリングの実務を担われたそうです。その後、「高木仁三郎市民科学基金」市民放射能測定事業・プログラムコーディネータを務め、「みんなのデータサイト」を設立、2018年から事務局長を務めておられます。

 「みんなのデータサイト」というのは、2013年に発足した、全国31の市民放射能測定所のデータをひとつのデータベースに登録したウェブサイト・団体で、土壌の放射能測定結果をまとめた「図説17都道府県放射能測定マップ+読み解き集」という冊子を発行しています。この本はすでに18000部を発行し、2019年には英語版のダイジェストも発行されています。

https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784991042706

 チェルノブイリの事故後、ウクライナやベラルーシでは国を挙げて土壌調査が行われ、避難・補償・保養の規準が決められ、原発事故後の現在と将来の放射能汚染予測が経年的に「アトラス」で公表されているそうですが、日本では広範囲の調査は航空機による空間線量調査が中心で本格的な土壌調査は行われていないため、自分たちでやろうと「東日本土壌ベクレル測定プロジェクト」を始められました。

 国の航空機モニタリング調査は福島県と隣接する県の5県だけの調査ですが、みんなのデータサイトでは東日本17都県のエリアをカバーする土壌汚染の測定調査であり、空間線量ではわからない土壌汚染の広がりや大きさがマップで表示されています。

 土壌汚染から想定される食品汚染の状況やどんな食品の影響が大きいのか、淡水魚のほうが海水魚より放射能の影響が大きく残ること、海水魚への汚染のメカニズムなども詳しくお話を伺い、食品汚染の深刻さや子供への影響、国の食品検査の実態などに驚きや不安を覚えられた方も多かったと思います。

 昨年の台風19号で宮城県の丸森町は大きな被害を受けましたが、その廃棄物の可燃物の処理を横浜市が受け入れたというニュースを紹介していただきました。丸森町は福島原発による土壌汚染が大きいところであり、首都圏の大都市で放射能汚染の恐れのある災害廃棄物の焼却がすでに行われているということ。しかもその決定には小泉進次郎環境大臣の意向が強く働いているといいます。

 先に紹介した「東日本土壌ベクレル測定プロジェクト」によると、放射能セシウムの汚染は東北から関東まで広い範囲に及び、その影響は100年後でも関東地域にも残ると予測しています。放射能という無味無臭で目にみえないものは、日常の生活ではほとんど気にしていない、というか気が付かないものです。しっかりした広範囲の測定結果によるデータや、長年の経験と知識に裏付けられたお話は説得力のあるものでした。

 小山さんのお話のほんとの一部しか紹介できなく、またたくさん見せていただいたマップ情報などもお見せできないのが残念です。データや解説は、みんなのデータサイトのホームページからも見ることができますので、興味のある方はぜひご覧になってください。

(2020.1.24[Fri]記載)


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