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2018年11月分

第141回(2018年11月15日)

■テーマ:「今、日本の郊外に住むのは、そして残るのはだれか―泉北ニュータウンと羽曳野市の事例からの考察」
■講師:ソフィー・ビュニクさん
(日仏会館・フランス国立日本研究所(フランス外務省・国立科学研究センター)研究員)

ソフィーさんはパリ第一大学(ソルボンヌ)で都市計画を学び、日本の郊外の高齢化に関する論文で博士号を取得されています。ソフィーさんの研究テーマは「都市の衰退と高齢化、居住と日常の移動に関すること」で大阪圏を対象とされており、大阪の都市状況に関する研究を国際的な視覚からとらえ直そうと、1940年代以降、ベビーブーマーを大量に受け入れた郊外の将来について考察されているということです。
泉北ニュータウンについては、2012年から2013年に日本学術振興会の研究員として大阪市立大学や立命館大学に招かれてフィールド調査を実施されています。

ソフィーさんの問題意識として、行政主導でコンパクトシティの促進という政策の下で都市中心部への再投資がなされ、高齢者の移動の負荷の小さい暮らしを奨励する一方で、若い世代をより多く取り込んで地方財政を維持しようという行政間競争も助長しています。そして、高度な都市機能の提供される地区に引っ越すこともできない高齢者の問題を過小評価していると指摘されています。このような高齢者は近隣や友人とのネットワーク、日常の生活習慣を失いそうになっているのだと。
そのため、高齢の住民のニーズに郊外がどう対応しようとしているのかという問題意識から、より若い人が郊外に住み続け、ニュータウンに転入してくる要因は何か、地方行政は若者を引き留めるために何をしているのかを見るということに興味が移っているということです。

ソフィーさんによると、日本の研究者は日本のニュータウン計画が雇用を確保していないことに批判的だが、フランスの研究者はフランスでは都市周辺部がカルフールのような大型商業施設の配置戦略によりモータリゼーションを助長してしまうなど、管理がうまくできていないことを指摘されており、日本の町内会やNPOなどの活発な活動をうらやんでいるのだそうです。この言葉は、我々のような市民レベルでのNPO活動に携わっている身としては大変心強く思いました。

日本のニュータウンの問題として、建物の急激な老朽化による住宅価格の低下に比べ、移動経費が大きく、住民の更新が十分にできていないこと。共働き世帯が多くなり、職住の近接が好まれるため雇用を提供していない泉北のようなまちは敬遠されてしまう。子どもたち世代にとっては、相続税の負担やリフォーム経費などの負担が大きく、結果として空き家が増加することになると指摘されています。

泉北ニュータウンは緑が豊富で大学やスポーツ施設なども整備されたアメニティの高い地区で多様な住宅も供給されています。しかし30〜49歳の層では転出者が転入者を上回っています。これらの年齢層の動きに着目した考察を披露していただきました。
1995年〜2015年の関西圏の人口動向をみると、人口が増加しているのは神戸、大阪、京都、名古屋を結ぶ東海道線沿線地域です。これらの地域では地価が相対的に高く、上昇している地域もあります。一方泉北河内では地価の下落傾向がみられます。

泉北に着目してみるとニュータウンでも最も古い地区で人口が減少しており、人口が増加しているのは都市化が抑制されているはずの農村地帯です。これらの地域では(開発許可の特例で)一戸建てや小規模な集合住宅が建っているそうです。しかしこの動きは泉ヶ丘駅周辺の活性化プロジェクトや団地のリノベ―ションにより居住者を増やそうとする施策と矛盾するものではないかと指摘されています。

泉北ニュータウンにおける高齢者の住宅シェアや学生のルームシェア、菜園付き住宅などの取り組みは残念ながら成功しているようには見えません。空き家バンク等を活用した高齢者世帯の一戸建てから公営住宅やURの住宅への移転も動きはありません。
20〜45歳の年齢層は減少していることは確かですが、新しく転入してくる人もいます。これらの人は、親が住んでいて子どもの面倒を見てもらえると考えています。
特に働いている若い人たちにとって、都市部に比べ泉北は魅力にかけ、また住宅も一戸建てを選択する傾向にあり、これが地域の細分化や都市の拡散という動きにつながってしまうと言われます。
ソフィーさんは、空き家の解体や土地の買い取りなどの方法は限定的だが、空き家対策法の採択がこのような状況を変えていくことができるのかどうか、調査していこうと考えておられるそうです。

私たちにはあまりなじみのない大阪圏の泉北ニュータウンを中心としたお話でしたが、首都圏の郊外ニュータウンにも共通する問題も多く、また関西と首都圏の違いもあると感じました。ソフィーさんには、ぜひ首都圏の郊外についても知っていただき、日本の郊外住宅地に関する研究を深めていただきたいと思います。
ソフィーさん、お忙しい中、遠く多摩まで来ていただき、ありがとうございました。
また、ソフィーさんを紹介していただき、講演の通訳と原稿の翻訳までしていただいた、多摩ニュータウン学会筆頭理事、明治大学教授の荒又美陽さんにも心より感謝します。
(今回のサロンは多摩ニュータウン学会との共催で行いました。)

(2018.11.22[Thu]記載)


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