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2017年01月分

第129回(2017年1月19日)

 今月は新年会を兼ねて、H27.10に実施した「まちせん10周年記念シンポジウム」における大月敏雄先生(東大教授)の基調講演のDVDを鑑賞しようという企画にしました。

 ビデオ鑑賞というより、新年会の方が盛り上がってしまい、先生の講演を聞くために集まっていただいた方には申し訳ない結果となりました。また、聞きそびれた方はDVDの貸し出しもしますので、お申し出ください。

 10周年シンポジウムの記録は、昨年の多摩ニュータウン学会の学会誌にも寄稿していますが、その概要をご紹介しておきます。なお、多摩ニュータウン学会誌は多摩センターココリアの丸善でも購入できます。

(以下、多摩ニュータウン学会誌への寄稿文から抜粋)
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大月敏雄氏(東京大学大学院工学系研究科建築学専攻教授)による講演は,『ニュータウンにながく住むこと』というテーマであった.全国の豊富な住宅団地や集合住宅などの事例調査をもとにした分析結果と考察をお話していただいた.

計画住宅地は未熟な状態から出発するものであり,多摩ニュータウンにしても40年が経過してもまだ未熟な状態である.これからどう成熟させていくかという視点を持つことが大切であるという視点が提示された.計画者の思惑通りには住宅地はできないものであり未熟な出発点でしかない.住む人のニーズが街を変えていく,時間経過が多様性をもたらすものである.

茨城県のある団地の事例から,空き地や空き家が,ある家族のライフサイクルの変化や多様なライフスタイルのニーズにより,時間経過とともに様々に活用されていることが紹介された.氏のことばによると,脱「1家族in1住宅on1敷地」である.また,同潤会アパートでは同じ階段室の上下階を世帯分離や子供の成長に合わせて買い増していくという事例もある.

少子高齢化の一つの姿として近居が最近増えているという.千葉県のある団地では約1割の世帯が30分以内の距離に近居している.都心の高層マンションでもやはり1割の人が近居している.

氏は「緩い定住」という概念を提示された.同じ住所にずっと住み続けるのが「固い定住」で,同じ町や団地内で移り住むことが「緩い定住」という.成熟の意味は,『人の生活は変わり,街も変わる.人は時間とともにいろんなタイプの「生活者」であることを遍歴する.いろんな人を受け入れることによって,街自体の性能が変化する』というものであり,いわば街は多様な薬の入った薬箱で,処方箋が住みこなしといえる.

盛岡のニュータウンの事例では,純粋な戸建て住宅地として計画されたなかに,アパートや公的な賃貸住宅の建設,戸建て住宅の賃貸化などがおこり,結果として,単身赴任者やシングルマザーの近居などを可能にし,多様性が生まれているという.純粋な戸建て住宅ではこのような多様性はできない.

近居と時間距離の関係では,30分以内の近居は約50%,60分以内だと80%になるという.定住だけでなく,住み替えだけでもない,成熟するニュータウンタウンの目指す姿とはどういうものかを考える必要がある.

コミュニティとプライバシーの関係をみると,街の中は高齢者や子育て世帯などの支援を必要とする人ばかりで,多様な街はホワイトノイズ状態にあり,コミュニティもプライバシーもどちらも大切である.高齢化へ対応するためには家族資源,制度資源を補完する地域資源が重要である.特に,外に出たがらない高齢男性のための居場所は少ない.街も住宅も多様化することは高齢者のためだけでなく,次世代の人たちが育つ環境をつくることになる.

(抜粋終り)

2017.1.21[Sat]記載)


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