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2013年03月分

第87回(2013年3月21日)

■テーマ :プランナーが見た復興の現状と課題
■講師: 宇野健一さん((有)アトリエU都市・地域空間計画室代表、多摩市在住)

 宇野さんは、2011年10月から気仙沼登米沢地区の防災集団移転促進事業のプランニング支援に、また、2012年7月からは女川中心部の震災復興区画整理事業の計画支援に関わっておられます。今回は、主に登米沢地区防災集団移転促進事業のこれまでの経緯をお話しいただき、そこから見えてきた課題などについてお聞きしました。気仙沼市登米沢地区は86世帯の小さな集落で、海岸線近くまで断崖が迫り、これを切り裂くように低地が幅狭く奥まで入り込む地形にあり、津波は25mの高さまで押し寄せたとのことでした。集落のうち9世帯が全壊、宇野さんはこれらの世帯の高台への集団移転の取組みに係わっておられます。

 2011年夏頃からNGOのシャンティ国際ボランティア会(SVA)が気仙沼に事務所を開き、被災者や地域のリーダーと集団移転についての協議を始め、2011年11月にSVAからの要請で宇野さんたちの建築、まちづくりの専門家が参加されるようになりました。

 宇野さんの話のなかで、プランナーとしてのこだわりを感じたことがいくつかあります。たとえば、造成計画を巡って、移転先の宅地は平地が基本と考える直轄コンサルタントと、地形を活かし高台から海を臨む景観にも配慮した計画とすべきと考える宇野さんたちとのあいだで意見の違いがあったが、話し合いを繰り返し、プランニングを練り直しながら合意できる案にまでまとめていったという、信念を貫くねばりづよさ。また、登米沢地域全体の地形模型を、各家庭から段ボールを持ち寄り住民の手で作成したり、移転予定地の高低差のわかる敷地模型をつくり、その中で地形に沿って住宅配置が可能であることを確認したりと、いとも簡単に手づくり模型をさっさと作ってしまう技術とすばやい対応力。移転の計画地だけでなく周辺との関係も考えて、行き止まり道路と結びつけた道路配置を提案し、今回の事業では実現できなくとも将来計画に盛り込むという、理想をあきらめない姿などなど・・・です。

 登米沢で比較的早く事業を進めることができたポイントして、被災世帯が小規模だったことに加え、信頼の厚い地元のコミュニティリーダーの存在、地域に入り込んで活動しているSVAの住民に密着した取組と専門家へのすばやい協力要請、直轄コンサルや行政との協力関係と役割分担などを指摘されています。

 宇野さんが話の終わりに言われた、「今回の震災を通じて、平常時からの信頼関係や行政、市民(団体)、専門家の連携・協働の必要性を改めて教えられた。」「集団移転事業にはランドスケープの視点が欠かせない、一度造成した地形は二度と元に戻らない。」「東北の風土や風景に手を加えることの責任感が求められる。」・・・という言葉が重く心に響きました。

 宇野さん、お忙しい中、講師を引き受けていただきありがとうございました。この次は、ぜひ女川の話も聞かせてください。

(2013.3.27[Wed]記載)


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