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2010年06月分

第58回(2010年6月17日)

【テーマ】UR賃貸住宅ストックをめぐって、建替事業と団地再生事業
【講 師】中山茂樹 氏(高齢者住宅財団常務理事、多摩市落合在住)

 中山さんは住宅都市整備公団からUR都市再生機構へ移行する時期にUR本社に勤務されており、URの団地再生に深くかかわってこられました。その経験を踏まえて、「UR賃貸住宅ストックをめぐって、建替事業と団地再生事業」というテーマでお話しいただきました。多摩ニュータウンにも直接的な影響をもたらすものであったためか関心が高く、活発な意見交換が交わされました。

 まず、これまでの20年以上に及ぶUR賃貸住宅の建替え事業の様子を、多摩地区にいくつかの団地を事例に、建替えの前後の比較しながらご紹介いただきました。現在も事業中のいくつかの大規模団地に共通して、事業が長期に及ぶことから当初の建替え計画からは時代を反映した軌道修正が行われてきていることがわかりました。特に最近の傾向として、新規賃貸住宅の抑制の方針や少子高齢化時代を反映し、建替えの余剰地は民間事業者や福祉法人などへの土地売却により、土地利用が大きく変わっていくことが印象に残りました。

 次に、現在の組織である独立行政法人都市再生機構(UR都市機構)に移行の際に導入された時価評価制度によるUR都市機構のバランスシートを公団時代のものと比較しながらお話していただきました。UR都市機構は、時価評価の結果7800億の赤字を抱えた状態からスタートし、その後のマンションバブルなどで負債額の圧縮が進んだものの、現時点でも赤字は数千億残されている見通しであるとのことでした。

 約77万戸のUR賃貸住宅のうち、昭和30年代の建物を対象とする全面建替え型から、今後は4割以上を占める約32万戸の昭和40年代の住宅が団地再生の対象になってきます。団地の立地条件などに応じて一部建て替えや集約型など新たな手法も取り入れていくということですが、団地が時価評価されたことにより、建替え事業は赤字が発生する事業になってしまったとのことでした。土地や床価格など不動産価値が下がっていることも原因のようです。

 そのような、課題を抱えつつ多摩ニュータウンでも団地の再生に本格的に取組む必要がありますが、住宅や団地は不動産として評価する“計算上”の世界から答えは見えてこないと思います。公的賃貸住宅はセーフティーネットを構成する社会資本という観点から、少子高齢化問題に積極的取組む政策的位置づけを獲得する中からしか、答えは見いだせないでしょう。

 本日の中山さんからお話しいただいたUR都市機構の状況を受止めつつ、その枠には囚われないで市民の立場から具体的な団地再生の提案をしていかなくてはと感じました。中山さん、貴重なお話をありがとうございました。

 なお、中山さんの個人のホームページには、これまでに携わってこられた団地再生とまちづくりの事例が豊富に紹介されていますので、こちらも参考にしてください。

http://homepage2.nifty.com/nakashigetama/TOP/newpage.html

(2010.6.23[Wed]記載)


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