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 木曜サロン
  記録・報告
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2025年11月分
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■ テーマ:「団地・マンションの将来」を考える〜多摩ニュータウンでの展開を念頭に〜 ■講 師: 戸辺文博(NPO多摩ニュータウン・まちづくり専門家会議 理事長)
以下のような構成でした。 1.多摩ニュータウンにおける建替え・再生の進捗状況 (1)諏訪2丁目の振返り (2)2件目の建替え事例:松が谷 (3)多摩ニュータウン再生の状況 2. 建替え事業環境の激変 3.多摩ニュータウンにおける建替え・再生の展望 〜法改正や今後の制度の弾力化を受けて〜 (1)建て替えか再生か! (2)建替えを選択する場合の留意点 (3)法改正を受け:一棟リノベーションは建替えに代わる有力な選択肢
● 多摩ニュータウンにおける建替え・再生の進捗状況 多摩ニュータウンの団地マンション建替え第一号となったブリリア多摩ニュータウンとなった諏訪二丁目について、中立的な立場のNPOとして事業者選定に係わった後、その後は地域への建替え事業の進捗状況を木曜サロンを通じ情報提供してきました。 その中で建替え事業に着手した時点で、NPOに対して事業関係者から建替え前後の権利者への3回のアンケートへの協力依頼があり、その後さらに新規住民にも対象を広げたアンケートを実施しました。特徴としては、建て替え後の住民の構成が子育て世帯が多く移り住んだことにより、バランスのとれたコミュニティへとシフトしたことがあげられます。 建て替え後も地域に開かれた空間や周辺の人も利用できる施設が確保され、斜面緑地も保存されるなど良好な環境が維持されていますが、これは事業者選定後に設けられた「まちづくりデザイン会議」(多摩市もオブザーバー参加)において地域貢献についても検討したことが、実際の事業にも反映されたものです。
多摩ニュータウン建替え事例としては、八王子市の松ヶ谷団地もあります。多摩市の諏訪2丁目団地が建替え後の環境を考慮し容積率を150%に抑えていることに対し、松ヶ谷団地は容積率200%を使いきっており、その結果一日中全く日の当たらない住棟があり、駐車場はパズル式で地上に鉄骨が剥き出し、マンションの玄関へは、左右に駐車場を見ながらのアクセスとなっています。残念ながら景観や住環境に配慮しているものとは言えません。建替え後のマンションは、今後長期間良好なストックとして次世代に継承すべきですが、その質を備えているのか疑問に感じています。
多摩市のニュータウン再生方針をみると、団地再生の考え方としては、ポンチ絵でイメージが示されているだけで、管理組合が取組む方向性まではわかりません。一方、諏訪・永山地区や貝取・豊ヶ丘地区では、合意形成段階で複数年にわたり「多摩市マンション再生合意形成支援事業補助金」が導入されており、画期的ではありますが、残根なことに活用実績が1地区だけという状況です。この間を埋めることが地域の専門家の役割と思っています。
●建替え事業環境の激変 近年のマンション市場の変化や工事費の上昇などの実態の紹介があり、その影響から、これまでは負担なしでも建替えが実現できたが、現状では一戸1〜2千万のオーダーの負担が避けられない状況です。この実態については、立地・建替え前後の容積別上昇率などの条件別試算結果を示した説明がありました。
●多摩ニュータウンにおける建替え・再生の展望 前述したように事業環境が厳しくなってきていることを受けて、団地・マンションの将来に向けた再生についてどのような展望が描けるでしょうか。 多摩ニュータウンの年度別の住宅供給平均規模のデータをみると、住戸規模が大きいファミリータイプが多くを占めるため、建替え対象はオイルショック前の団地に限られるのではないかと思われます。 これらの団地は ・1住戸当たりの専用面積が50u前後と狭い ・全て同じ間取りであり、階高(天井高)や階段室のサイズが時代に合わず陳腐化している ・設備配管等が長寿命化に対応できない水準になっている ・壁や床(スラブ)の厚みが経済設計(最低限)で、今の基準では耐震基準、防音性、温熱環境(断熱性)が安全快適な生活の基準を満足していない などの課題を抱えています。
建替えを選択する場合の留意点としては、郊外地区の現在の優れた住環境はできるだけ維持しつつ、建替え後は建物の寿命は100年以上持つことを念頭に、次世代に継承する価値を有するかどうか、費用負担も次世代に継承できるスキームを考えることなどが重要なポイントとなるのではないでしょうか。
「マンション管理・再生の円滑化のための法改正」が行われ、一棟リノベーションは建替えに代わる有力な選択肢となる可能性があるかもしれません。分譲住宅ストックの多くを占める階段室型の最大の課題と考えるエレベーターの設置や高齢者世帯が多くを占めていると思われるタウンハウスのグループホームへのリノベーションなどのアイデアもあります。
以上の話題・問題提起が、居住者の高齢化や事業環境の変化によりなかなか進んでいない団地・マンションの再生の隘路を打開するきっかけとなることを期待したいものです。
(2025.11.30[Sun]記載)
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