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木曜サロン

記録・報告

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2024年05月分

第172回(2024年5月16日)

■ テーマ:「素晴らしき団地ワールド」
■講師:金丸典弘(かなまる よしひろ) さん(だんちぐみ(団地再生事業協同組合)代表理事)

金丸さんは多摩ニュータウン豊ヶ丘団地育ちの団地っこで、金融業界からバブル崩壊後に建設・不動産業界に転じ、20年間にわたり”建築家と唯一無二の空間をプロデュース”するという仕事をされてきています。住宅から施設、オフィス、店舗など幅広く手掛けておられます。また住宅リフォームのコンクールに応募して優秀賞をとられたり、国のマンションストック長寿命化等モデル事業に、「既存マンションの上部増築による、サービス付き高齢者向け住宅導入」をテーマにして採択されたりと、住宅や団地のリフォーム、リノベーションを通して、可能性を探求し提言しておられます。

2013年に、「団地再生事業協同組合」を設立され、建築・不動産事業者を組織し、建築家・クリエーター・個人投資家らとともに、団地の再評価や流通促進に取組んでおられます。

金丸さんは、実は木曜サロンは2度目の登壇になります。7年前の2017年の5月、第132回の木曜サロンで、「空き家のバリューアップで、団地に次世代の家族を呼び込む」というテーマでお話していただきました。本日のサロンはその延長上のさらに進化した取り組みを聞かせていただくことになりますが、当時の話題を軽く振り返っておきます。

7年前は「団地の空き家をお宝にかえる取り組み」という話題で、500万円程度の団地の空き家を買い取り、デザインリノベーションによって、付加価値をつけ、市場より2,3割高い1500万円程度で流通させるという話をされました。

当時話されたキーワードとして、FⅼowからStoⅽkへ、住みながら進化する中古市場の広がり、リフォームからリノベーションへ、多様性が認められる社会、モノからコトへ、価値の共有、ミレニアル世代がマーケットを主導するなどのことをあげられています。若い人たちの暮らしや価値感として”快適に引き籠る””ゆるく繋がる”ということがあり、共働き、在宅ワーク、副業、生涯独身などが当たり前になってくる時代がきていると指摘されていました。

当時からすでに団地再生が社会的な課題となっており、再生の手法はなかなか見いだせない状況でした。その中で、さし込む光とか、風通し、つながり、安心・安全、暮らしやすさなどの五感で感じる団地特有の価値を市場化できないかということを感じ始めていたということでした。

フローからストックへという流れのなかで、住宅ストックの流通促進のための新しい金融商品のアイデアとして、国交省の補助事業に採択されたのが「ミレニアル世代に向けた団地を買いやすくする金融商品」の提案でした。これまでの不動産評価の通念から脱却した、暮らしの豊かさにつながるような団地の良さを価値化できる評価を加えた、新しい不動産評価の軸を構築すること。「優良団地認定」のような、いい団地を認定するしくみ。若い人が団地を買いやすくするような残価設定や買取保証のようなしくみづくり。などを提案されています。

ここからが本日の話になりますが、先述の評価軸の発展形として、「Danchi-Score100」という団地の新しい評価軸。一定水準以上の評価の団地を認定する「三ツ星団地」。さらにこれからの団地を支える人たちという3つの柱でお話ししていただきました。
「Danchi-Score100」は、団地のもつ強みや課題を「見える化」し、管理組合や住民が健全な団地運営に必要な取組みを知るための評価ツールとなるものであり、一定水準以上の良好な団地を「三ツ星団地」として認定し、管理組合等においては、団地の将来像の検討等に役立てることができます。評価項目は、ハード・ソフト100項目から構成し、100点満点で評価します。団地の環境要件として、「敷地や屋外空間の環境」「団地運営・経営」「地域社会・コミュニティ」、住戸・住棟の基本要件として「専用部の居住環境」「住棟共用部の居住環境」などについて、「1基本性能やそのポテンシャル」、「2基本性能やその維持管理活動」、「3快適性・居住性を保つしくみ」、「4ゆとりや拡張性、将来性など」の4つの評価軸(観点)を定めています。

評価の結果は、わかりやすくビジュアル化したグラフなどで示し、優れている点や劣っている点、レベルはどの程度かといったことが容易に判別できることを目指しています。
団地評価システム「DANCHI-SCORE100_Ver2.0(2023)」をリリースし、客観的に評価するためのマニュアルも作成されています。今後、管理組合にピーアールして行くうえで、一緒に活動してもらえる協力団体を募集しているところだそうです。

管理組合に働きかけて、団地評価を行い、「三ツ星団地」となった団地も出てきているそうです。「三ツ星団地になろう!」というピーアール動画も用意していただいたのですが、通信環境の関係で残念ながら動画の閲覧はできませんでした。

次の話題は、「団地を支える人たち」です。
金丸さんの事業は、団地の住戸を取得し、リノベーションして売却するものですが、通常のリフォームと違い、リノベ費用は相当額になります。この費用の捻出に金融機関は金を出してくれない。そのため「Renovation Fund」をつくり社債を発行して個人投資家から出資してもらう仕組みを作っているそうです。

また、これからのマーケットを主導するのは、Z世代だとおっしゃっています。1990年代後半〜2012年頃生まれのZ世代のマーケティングのポイントは、

•スマホやSNSを常に利用するため、デジタルでアピールすることが重要。文字より音声やアニメなどを使ったほうが受け入れられやすい。

•その一方経済的に保守的な傾向も見られ、 コスパやタイパを重視するため、商品・サービスを利用するメリット、費用を支払うだけのメリットを明示することが大切と分析されています。

金丸さんたちのリノベ住戸の購入層は若い独身女子が多いそうです。また団地再生支援協会の女性メンバーば「団地女子会チーム」を結成して、精力的な活動をされているそうです。彼女たちの話題の中で、「団地再生」は「男子再生」だという言葉が出てきたそうで、まさに同感でした。団地女子会のロゴは”女””子”をくっつけて団地”好”会としているそうです。

最後に紹介していただいたのは、鶴川団地のセントラル商店街の最近の様子です。ここでは空き店舗に若いクリエーターの方たちが出店しており、個性的な古着・雑貨店、カフェ併設の骨とう品店、外装は一見貧弱ながら内装はおしゃれなホテルなどが生まれており、面白い商店街に変容しているようです。

これからの団地再生は、z世代の若い人たち、団地に興味を持って新しい暮らしを始めようとする若い独身女性、商店街を元気にする若いクリエータの人たちなどを巻き込んでいくことで、可能性が生まれてくるのかもしれません。

懇親会では団地女子会や男子再生でとても盛り上がりました。金丸さん、お忙しい中、また急な要請にもかかわらず、講演をお引き受けいただきありがとうございました。

2024.5.25[Sat]記載)


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