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木曜サロン

記録・報告

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2024年01月分

第170回(2024年1月18日)

■テーマ: 『人が集う、都市農地』 〜“農”が持つ魅力と力とは
■講師: 舩木翔平(ふなき しょうへい)さん(八王子市議会議員、認定農業者)

舩木さんは、2010年に東京農業大学を卒業された後、2012年に八王子市で新規就農されました。当時、鈴木亨さんの牧場跡をかりて、YUGI MURA Farm"おっさん牧場"を立ち上げ、株式会社FIOを設立されたばかりのころでしたが、”大学をでたばかりの農家とは無縁の若者が、新規就農して都市農業に新しい風を起こそうとしている面白い人がいる”ということで、話を聞いてみようと2013年2月の第86回木曜サロンで話していただきました。それから10年が経過し、2013年4月の八王子市議選で市議にも当選し、舩木さんの活動はどのように進化しているのか、とても興味深く話を聞かせていただきました。

舩木さんのこれまでの活動は、”都市”で農業を営む意味、農と人との関わり、都市の中の農地の在り方・・・を問いかけ、答えを追い求める活動のように思えます。2013年〜2017年の株式会社FIOは、若い農業仲間3人で、農産物販売、農業体験、農家連携などを目的として、野菜・ハチミツの⽣産販売、農業体験イベント企画運営などの事業を展開されてきました。2018年には一般社団法人畑会の設立に参加し理事に就任されました。

畑会は「畑での出会い」を提供し、農業経営や農を基盤としたコミュニティづくりを目指して、農業体験と農作物を使った料理を⾷べるイベント、研修事業&シンポジウムなどの事業を展開しておられます。また、ユギムラ体験農園(ユギムラ牧場)、もぐもぐファーム体験農園(小比企町)、八王子モーモー体験農園(磯沼ミルクファーム)などの体験農園サポートや援農サポートも行っています。

今後は、農地の有効活⽤のため、体験農園の仕組みを基本とした農園づくり、オーナーである農家が主役として、農園に関わる⼈達と共に⾃主的で持続的な運営のサポートを目指しておられます。

都市農業を守るためには、農業生産だけでなく体験農業や貸農園などのビジネス的な視点を持った人材が欠かせず、人材育成も重要な課題とのことです。畑会にもいろいろと相談が増えており、今後はさらに人的ネットワークを広げ、たくさんの人の希望や夢を実現できるような企画を進めていきたいということです。ご自身の出身大学のつながりも貴重なネットワークとなっているようです。

また、農地の賃貸借に関する法的な備えは十分とは言えませんが、市民農園・体験農園を開設するうえで、「特定農地貸付法」「市民農園推進法」などの法的な枠組みもできてきています。練馬区では、農家が開設する体験農園を推進し支援するため、「農業体験農園」の制度がつくられており注目されます。さらに、農家が安心して体験農園を経営していけるような、信頼関係を構築するための中間管理機構のような役割が必要ではないかと指摘されています。都市部における農業体験ニーズは高く、今後も交流の場や新たなコミュニティ形成の場として大いに期待されるとのことです。

畑会の活発な取組みが注目され、2022年度からは多摩市の農業公園構想推進のサポートも始まっています。農業公園構想は多摩大学の東側の連光寺・若葉台里山保全地域の拡張区域内の農地を、市民が農作業の体験や、体験を通じた交流・ふれあいなどを行うことができる農業公園として整備しようというものです。

多摩市は東京都の補助金を活用し、エリア内の生産緑地を買い上げ、2027年(令9年)のオープンを目指しています。2023年度にはプレイベントとしてサツマイモやジャガイモの植え付けから収穫までの体験学習も行われ畑会もサポートを担っているとのことです。
会場からは、農業公園近くの天王の森公園・八坂神社の貴重な近代歴史的スポット(明治天皇の行幸やその行幸をめぐる地域社会の動向など)も視野に入れたエリアの活用の提案もあり、今後の多様な展開が期待されます。

舩木さん個人としても、遊休農地の活用や都市農地を守るための活動もされています。
2017年には八王子市小比企町の1,000uの遊休農地耕作放棄地を活用し、イチジクの栽培を始められ、「東京イチジク」のブランドで販売しています。懇親会では、イチジクの収穫時期と議会開催時期が重なることの悩みも話されていました。

さらに、2022年に八王子市大谷町(通称ひよどり山)にある1,500uの生産緑地(市街化区域)を購入されました。サツマイモ作りや一部をひまわり畑として活用、地域の子どもたちや保育園児の来園もあるようです。資金的にも今後の税負担なども考えると、相当思い切った決断だったのではないでしょうか。

ひよどり山エリアは、20軒ほどの農家もありますが、都有地も多く2000年の三宅島噴火の際には、避難してきた島民が農業を営む「三宅島げんき農場」としても利用され、その後「とうきょう元気農場」が開設されて生産物は都内区部の学校給食の食材供給に充てられているとのことです。八王子市としても都市農地の利活用が期待できるエリアとして取り組んでいるとのことです。

”農”は農業生産、農を通じたコミュニティづくりなど多様性を秘めていますが、中でも教育的な意義も重要だと言っておられます。農水省においても農業体験の提供や生産者からの学びなどを目的として「教育ファーム」の取組を推進しています。

自治体の取組み事例の紹介もあり、市議の一員として視察された新潟市の「アグリパーク」は市の教育委員会に農業担当が配置され、農業体験学習の年間のカリキュラムを作成し、子供たちの農業教育が行われているとのことです。ほかにも、横須賀市の「地域の魅力体験サイトシテコベ」、小金井市の「わくわく都民農園」(JR小金井駅徒歩5分!)を挙げていただきました。

注)「地域の魅力体験サイトシテコベ」(横須賀市)・・・横須賀市の市議で起業家の嘉山氏が運営する「株式会社シテコベ」は、地域の魅力に付加価値を高めるため、農業体験や漁業体験などを行っています。シテコベとは三浦半島の長井弁で「やってみよう(してこべぇ)」という意味で、自然環境豊かな三浦半島で「漁業・農業体験などを通して、地域資源や魅力に触れてもらいたい」という思いから事業をスタートしたそうです。ファミリーから小中学校の団体まで、農業・漁業・酪農・里山自然体験などの季節に応じた三浦半島の楽しみ方を企画・創造しています。

注)「わくわく都民農園」(小金井市)・・・東京都が、生産緑地の貸借制度を活用して令和4年に開設されました。都市農地の保全、高齢者の活躍、多世代交流などを併せて進める事業で、東京都、運営事業者である(一社)小金井市観光まちおこし協会、小金井市、生産緑地所有者の四者で協定を締結し、協働により実施しています。農園の運営は「シニア農園」「学校農園〈共菜園〉」「福祉公園(農福連携)」「地域農園(地域・多世代交流)」「子ども農園(農体験による学び)」の目的別に5種類の農園を提供しています。

舩木さん、市議との2足わらじでお忙しい中、ありがとうございました。多摩市の農業公園の今後の展開や、舩木さんの様々な試みもこれから楽しみにしています。

(2024.1.30[Tue]記載)


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