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2023年01月分

第164回(2023年1月19日)

■テーマ:「 今後の多摩ニュータウンのまちづくりについて 」
■講師: 陰山 峰子(かげやま みねこ)さん( 多摩市副市長)

陰山さんは、昨年4月から東京都からの出向で多摩市の副市長に就任され、市民経済部、子ども青少年部、都市整備部、環境部を所管されています。東京都では、管理職として都市整備局や住宅政策本部に席を置かれており、買い物難民への対応が課題となっていた時に、多摩市から都営住宅でのスーパーの移動販売を相談され、愛宕団地で都営住宅における移動販売の制度化を実現したり、都市計画課長時代に南多摩尾根幹線の都市計画変更に携わったことなどが多摩市との関わりとしてあったということです。

多摩市は市政50周年を迎え、今後の都市の在り方を検討していくうえで、様々な計画の改定作業を進めているところであり、これらの改定状況や計画内容について話題提供していただきました。

〇総合計画について
現在の第五次総合計画は2011年に策定した20年後を目標とする基本構想、2019年から10年間の第3期基本計画であり、第3期基本計画は「健幸まちづくりのさらなる推進」を基礎となる考え方、全庁横断的に取り組む課題として策定されています。
現行計画の策定から10年が経過し、様々な情勢変化にも対応する必要性から、新たに基本構想から作り直すことにしました。”健幸都市”の考え方を基本構想にも取り込み、これまで基本構想は20年後を目標としていたものを、新構想では10年後を目標として想定し、時代の変化に柔軟に対応していくものとしてます。

昨年7月に15名の委員からなる審議会を立ち上げ、”成長”、”安心”、”多様性”、”循環”、”関係”、”場”などをキーワードに、仮の将来像を「みんながそれぞれ安心と成長をずっと続けられるまち たま」として分野別の将来像を検討しているところです。10月には関戸、永山、多摩センターで市民ワークショップを開催し、そこでの意見もフィードバックしつつ検討を進めています。今後、4月ころには基本構想の素案をまとめ、パブコメ、市民説明会を行い、9月議会で議決、12月には基本計画と合わせて総合計画として決定する予定です。

〇都市計画マスタープランについて
平成25年に策定された現行の都市計画マスタープランは、総合計画の見直しに合わせ令和7年3月の改定を予定し本年度から作業を始めています。改定の視点として、「健幸まちづくり」の考え方をハード面に反映させること、「多摩ニュータウン地域再生ガイドラ
イン(東京都、H30)」に基づくことがあります。都市計画関連の視点としては、「ウォーカブルなまちづくり」「リ・デザイン」「脱炭素型まちづくり」「復興まちづくりの事前準備ガイドライン」などがあげられます。また、社会経済情勢の変化として、新型コロナを踏まえた生活様式の変化やSDGsの取組みを考慮する必要があります。

昨年10月に市民意向調査を実施、今年2月まで意見募集を行っています。令和5年の秋から冬に地域別の市民ワークショップや説明会を開催して、令和6年夏ごろに原案の説明会やパブリックコメントを実施し、令和6年度中に策定する予定で進めています。また、並行して、市内産業の総合的な振興施策を検討するため、「(仮称)産業振興マスタープラン」を令和5年から6年にかけて策定することになっています。

〇ニュータウン再生について
平成25年度に多摩ニュータウン再生検討会議を設け、「多摩ニュータウン再生方針(平成28)」を策定、その後、市民委員も含めた多摩市ニュータウン再生推進会議に会議体を変え、平成30年2月に「多摩ニュータウン リ・デザイン諏訪・永山まちづくり計画」を策定、さらに、令和2年度から検討を進めてきた「愛宕・貝取・豊ヶ丘地区等まちづくり計画」と「南多摩尾根幹線沿道土地利用方針」を今月中に公表する予定です。

諏訪・永山地区は第一次入居地区であり先行再生地区として位置付け、永山駅周辺再構築、分譲団地再生、公的賃貸住宅団地再生、周辺環境整備など6つのリーディングプロジェクトを定めて進めています。

愛宕・貝取・豊ヶ丘等地区では、”短期的には小さなアクション(実証実験等)の積み重ねにより、地区の魅力の向上と課題解決を図る。”という方向性のもとに、住宅ストック活用、分譲住宅再生、賃貸住宅再生、近隣センター活性化、移動の円滑化、公園・遊歩道活用の7つのリーディングプロジェクトを定めて進めていくものとしています。

南多摩尾根幹線沿道土地利用方針では、”多様な機能集積による沿道拠点化を図ることにより、若年層・子育て世帯を呼び込む”という目標のもと、産業・業務集積、暮らしを支える機能の充実、職住近接の実現、体感型の賑わい・魅力発信、次世代交通モードへの対応、新たな暮らしを創造するイノベーション環境の6つの基本方針を定めて進めていくこととしています。

ニュータウン再生については、外部からはなかなか動きが見えにくいと感じているところであり、具体的でわかりやすく動きを見えるようにしていく必要があると考えています。

〇多摩センター地区活性化に向けた取組みについて
多摩センター地区では、令和4年7月にパルテノン多摩のリニュアルオープン、中央図書館が令和5年7月オープン予定、これに合わせてレンガ坂のリニューアルが竣工、中央公園もPFIにより今後改修工事を行い、令和7年1月にオープン予定となっています。また、令和4年3月には公園内施設を中心に連携して活性化に取り組むため、多摩中央公園・多摩センター連携協議会が設立されています。これらの施設整備の完成に合わせて、令和6年度をめどに多摩センター地区の将来ビジョンを策定することとしています。

ビジョン策定に向けた行動指針のポイントを「まちづくりからまちづかいへ」として、庁内や市内企業の若手メンバーで構成する実行委員会を設け、まちづかいの声を集める活動を始めながら、一緒にプレイヤーとして関わっていただける方も集めています。今年度、仮のビジョンをまとめ、来年度以降、社会実験によりビジョンの検証を行い、ハードを含めた行政戦略をまとめる予定です。

ほかにも、「みどりと環境基本計画」の改定、庁舎建て替え基本構想・基本計画、地域福祉計画の改定などの作業を進めています。

陰山副市長のお話しのあと、参加者との活発な意見交換ができました。その一部をご紹介します。

・社会実験やワークショップはとても大掛かりで楽しいものであったが、社会実験の結果を受けた市の政策は、必ずしもそれらを反映したものでもないものが多々みられる。社会実験やワークショップの解釈のしかたが大切。

・京王プラザの撤退など多摩センター地区の価値が下がっていることの現れではないか。
・先進的な多摩ニュータウンの事業では素晴らしいインフラの整備が行われたが、これを受けとめる市の維持管理が貧弱では、せっかくのインフラの価値がなくなってしまう。

・どういうまちにしていくのか、基本的なビジョンを見出していかないと中途半端なものになりかねない。尾根幹線沿道の土地利用においても、誘致する機能のエネルギーをまち全体にどうつないでいくかが見えない。

・正解のない問題という言葉があったが、公団・URのまちづくりでは、ある意味で正解を与えてくれている。これらを継承し、未来につないでいくことが重要ではないか。

・モビリティは多様化しており、来年度検討される自転車歩行者のルール作りにおいては、多摩市全体のモビリティの問題ととらえて検討してほしい。

・まちづかいとして市民の声ばかりでなく、実際に資金を提供し事業を行う事業者の声も重要である。

・リニアを見据えたとき、都市間競争に打ち勝つためにはビジネス誘致の視点が重要ではないか。賑わいや働く場の集積が都市の魅力につながる。

・様々な計画立案において、まちの実情を理解していない外部のコンサルタントをつかうのではなく、市内の専門家やプロフェッショナルはたくさんいるので、これらの人材を組織化するなどもっと活用することを考えてほしい。

陰山さん、お忙しいところ大変ありがとうございました。意見交換では手厳しい声もありましたが、直接市民の方々と話しをしていただく機会を設けることができて、よかったのではないかと思います。これからも、いろんな場面で意見交換ができれば幸いです。

(2023.1.31[Tue]記載)


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