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2022年05月分

第160回(2022年5月19日)

■テーマ:「マンションの60年とこれからの展望 〜マンションに明るい未来はあるか〜」
■講師:飯田太郎(いいだたろう)さん((一社)マンションライフ継続支援協会(MALCA)相談役、(公財)まちみらい千代田顧問、月刊マンションタイムズ(不動産経済研究所)編集協力者等。マンション管理士)

飯田さんは、これまで広告やマーケティングの仕事でマンション関連の業務を手掛けてこられ、ご自身のマンション管理組合の理事長や修繕委員長も経験されています。今でもマンションライフ継続支援協会、まちみらい千代田などの団体で顧問を勤められ、月間マンションタイムズの編集など、マンションに関わる様々な分野で活躍されています。
今年は区分所有法の制定から60年となり、そのうちの50年をマンション関係の仕事に携わってこられた経験から、マンションのこれからと将来の可能性について考えたいということで、今回サロンで講演していただくことになりました。

飯田さんは、マンションの60年の歴史を6つの時期に区分し、それぞれの特色と時代背景について提示されました。これは今回のサロンに向けて、試行錯誤しながらいまでも悩みつつまとめられているということですが、大変有意義で興味深い分析ですので、簡単にご紹介します。

@黎明期(1955(S30)〜1971(S46))高度成長期におけるマンション建設ブーム
1955年に日本住宅公団が設立され新しい住型式、ニュータウン建設が始まる。1962年に区分所有法が制定されたが制度インフラは未整備。分譲業者、管理業者とも玉石混交。コーポラティブ方式によるマンション供給も登場。

A創世記(1972(S47)〜1981(S56))2度のオイルショックを経て安定成長に向かう時代
1972年の列島改造論に始まる第3次マンションブームの到来。その後、1972、1979年の2度のオイルショック。1976年には建築基準法が改正され日影規制や総合設計が制度化。1978年の宮城県沖地震を経験し1981年には新耐震基準ができる。

B定着期(1982(S57)〜1989(H元))バブル経済のもと地価高騰の時代
1982年中高層共同住宅標準管理規約の制定、1983年区分所有法改正でマンション管理は充実。一方地価高騰、マンション価格が年収の5倍を超える。地価監視区域制度や土地基本法が制定された。農住法が制定され、都市農地の活用や市街化区域内農地の宅地並み課税も議論された。

C発展期(1990(H2)〜1999(H11))バブル崩壊と地価暴落の時代
1990年代初めのバブル崩壊とともに不動産業界の不良債権が築盛、ディベロッパーの淘汰。マンション価格も低下し、マンション供給も増加。1995年には阪神淡路大震災により多くのマンションが被災し100棟超が建替え。一方、1993年には環境基本法が制定、1996年土地政策審議会答申による「所有から利用へ」の提言、1998年「21世紀の国土のグランドデザイン」など21世紀を目前に新しい取り組みの機運が生まれてきた。

D成熟期(半熟)(2000(H12)〜2009(H21))マンション管理の体系が充実していく時代
2000年住宅品質確保促進法、マンション管理適正化法、長期修繕ガイドライン、マンション建替え円滑化法、2001年マンション管理士法など、相次いでマンション管理の体系・法制度が充実した。一方、マンションへの信頼を損なう構造計算書偽造事件も発生。マンションストックは500万戸を超え、良好な住宅ストック形成への機運も芽生えてきたが、マンション事業は成熟に至らず「半熟」状態にあった。

E循環期(2010(H22)〜)少子・高齢化、人口減少に向かう時代
2011年東日本大震災、2016年には熊本地震と大規模地震が連続して発生。2020年改正マンション管理適正化法・建替え等円滑化法の制定。マンションを巡る二つの老い(高経年マンションの増加と居住者の高齢化)が議論されるようになり、マンションの建設から維持管理と再生にシフトするようになった。自治体やマンション当事者(ディベロッパー、管理会社、管理組合、管理士等)も対処の方向を模索中といった状態にある。

このようなマンションの歴史を振り返り、その過程で飯田さんが経験されてきた様々なできごとマンションとの関りなどもお話しいただきました。これらを踏まえ、これからの展望を次のように述べておられます。

「今後とも、よりよい住宅生活へのニーズは大きく、マンションはコンパクトなライフスタイルに適合し、かつ防災・減災にも優れている。区分所有者が維持管理の大変さを理解し、習慣づければ発展の可能性は大きい。これからタワーマンションの課題が本格化するようになると、維持管理や再生の認識が深まってくる。

また、関係人口(交流人口)の増加による2地域居住が広がっていけば、マンション型の居住も拡大するであろう。岸田内閣のデジタル田園都市構想を国土及び居住の在り方とリンクすることが重要。つぎはぎでつくられたマンションの総合法制化に期待したい。

マンションを供給と再生の循環型事業とするためには、公(計画性+秩序型)と民(野武士型エネルギー)の連携が必要。建替えに際しては公共の土地取得による定借マンションや公共施設との合築も考えられる。多摩ニュータウンは公・民の連携できる条件があり、新たな事業モデルが誕生する可能性を秘めている。」

お話の後の意見交換では、マンション管理の在り方や管理組合の抱える様々な課題について議論が交わされました。
飯田さん、ご苦労の後がうかがわれるマンションの歴史的な分類と考察、興味深いお話をありがとうございました。

(2022.5.23[Mon]記載)


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