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2022年03月分

第159回(2022年3月17日)

■ テーマ:「現役国家公務員が地域活動に飛び出してみた」〜地方自治の理論と実践〜
■講師: 小川大介(おがわ だいすけ)さん((一財)地方自治研究機構 調査研究室長)※総務省から出向

小川さんは総務省に勤務される現役の国家公務員で、現在は地方自治研究機構に出向されています。関東や九州各地を転勤され、多摩市に居を構えられて7年になるということです。

地域においては、多摩地域広域の自治体職員の勉強会「タマガワ・リーグ」や多摩市の若者会議のコアメンバーとして参加されるなど、多彩な活動をされています。今回のお話は、総務省という地方自治に係る様々なお仕事をされる国家公務員という立場で、自治体の地域活動にご参加される中で感じられたことをお聞きし、地方自治、住民自治とは何ぞやという素朴な疑問に対して議論を深めようというテーマです。

お話は、総務省の役割や地方自治、自治体戦略2040などから始まり、地方公務員の副業・兼業、多摩市の自治推進委員会や「地域委員会構想」について、そして小川さんが地域活動に関わるきっかけ・・・と大きなテーマから多摩市の具体的な自治政策や個人的な関りまで幅広い内容でした。

総務省は旧総務庁、自治省、郵政省の3省庁が統合された役所です。役割は旧省庁単位で分化されており、自治省系の業務は地方自治法、地方交付税法、地方税法に関わるもので、大半の業務が制度設計に関するもの(団体自治)であり、総務省職員は地方自治体への出向により自治体の実情を学ぶということだそうです。

地方自治は憲法の第8章に定められ、「団体自治」と「住民自治」の概念が規定されています。「団体自治」はいわゆる地方公共団体に関わること、「住民自治」は住民の政治参加、選挙権や直接請求権などに関わることということができます。住民に関わることは基礎自治体(市区町村)が担うものとされ、地方自治法では”地方公共団体の自主性及び自立性が十分に発揮されるようにしなければならない”と『市町村優先の原則』が謳われています。財政規模も地方自治体が約6割と国を上回っています。

国と地方の関係は主従ではなく役割分担が基本です。平成12年施行の地方分権一括法では、国と地方自治体は上下・主従の関係から対等な関係となり、機関委任事務(国の事務)が廃止され、これに伴い国の自治体に対する包括的な指揮監督権が廃止されました。

最近の地方自治に関わる話題として2点、一つは「自治体戦略2040構想」です。高齢者人口がピークとなるおおむね2040年頃に自治体が抱える行政課題を整理し、今後の自治体の在り方を展望し、課題解決に向けた対応策を検討しようとするものです。大変興味深いのですが、内容が多岐にわたり、奥深いものになっているので、ここではキーワードをいくつか紹介するにとどめます。

迫りくる我が国の内政上の危機とその対応として、@若者を吸収しながら老いていく東京圏と支え手を失う地方圏、A標準的な人生設計の消滅による雇用・教育の機能不全、Bスポンジ化する都市と朽ち果てるインフラの3点が指摘されています。

そして新たな自治体行政の基本的考え方として@スマート自治体への転換、A公共私によるくらしの維持、B圏域マネジメントと二層制の柔軟化、C東京圏のプラットフォームの4項目について提言されています。

さらに内容を知りたい方は、総務省の「自治体戦略2040研究会」のWebサイト(
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/jichitai2040/index.html
)をご覧になってください。

二つ目の話題として取り上げるのは「公務員の副業・兼業」ということです。地方公務員法では地方公務員の副業は許可制となっていますが、最近は地域社会のコーディネータとして公務以外の場で活動することが期待されるようになっています。神戸市をはじめとして先進的な自治体では、許可基準を明確にして社会貢献のための兼業を促進している自治体もあります。

兼業による社会貢献活動への参加を通じて、実際の公務にその経験や培われたスキルを活かすことが重要だと小川さんは言われます。小川さんは令和元年から多摩市自治推進委員会の副委員長として「地域委員会構想」に携わっておられます。「地域委員会」は多摩市がめざす「市民・地域と行政の協働のしくみづくり」を具現化するため、国の地域共生社会の実現(厚労省)、地域運営組織の形成(総務省)、公共私の連携(地方制度調査会)などの動きも踏まえて、住民自治を充実させていくための制度として考えられています。
地域委員会は、地域担当職員、地域福祉コーディネータ、中間支援組織から構成され、地域の中をつなぐためのプラットフォームづくりやプロジェクトごとの多様な活動を行い、地域における人材の掘り起こしや課題解決に向けた実践的活動を生み出していこうとするものです。

実際の活動においては中間支援組織の役割が重要となり、小川さんも関わっておられる多摩市若者会議は中間支援組織として活動しています。また、「多摩市エリアサポーター制度」として市職員が地域担当として関わり、地域の中での課題を把握し、プラットフォームをつなぐとともに、市役所内の縦割りの組織をつないでいく役割も期待されています。

小川さんが、地域活動に関わるようになったのは、住民自治を知りたいという建前とは別に、独身中年男性として孤立したくないと思っていたところに、自治大学校での自治体職員の方との研修がきっかけで、業務以外に学ぶ機会をつくりたいと思うようになったことだそうです。《人間関係のわらしべ長者》とスライドのタイトルに記載されていましたが、それからの活動は、タマガワ・リーグから多摩市職員の自主勉強会への参加、タマガワ・リーグの幹事メンバーとして活動していく中での人間関係の広がり、多摩市若者会議への参加とその中での様々な人との出会い、・・・と、まさに『人間関係のわらしべ長者』のようです。

地域活動を通じて感じたこととして、多摩市の人は暖かく自分以外のものに対する寛容性がある。国家公務員や都道府県職員は地域活動に参加すべきで、自分が住民として感じることを政策に反映すべき。多数決を原則とする民主主義から取り残される人、行政だけではカバーできない「ひとりひとりの幸福追求」に中間支援組織の役割が重要ということを挙げておられます。

最後に地域でこれから取り組んでいきたいこととして、若者会議で取り組んでいるストリートビュー撮影のドキュメンタリー映画づくり、アダプト制度を活用した遊歩道での野菜づくり、そして、地域で「幸せを繋ぐ人」、多摩市での講演な出会いの「恩送り」をやっていきたいそうです。

小川さん、多方面に渡る興味深いお話をありがとうございました。

(2022.3.22[Tue]記載)


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