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2020年09月分

第150回(2020年9月17日)

■テーマ:社会保障ビジネスと地域活動の両面からいみたインクルーシブな地域づくりに必要な事
■講師:影近 卓大(かげちか たくだい)さん(合同会社ライフイズ代表社員)

前回に続き、多摩ニュータウンで活躍する若者世代に登場していただきました。影近さんは、網走に生まれ18歳まで過ごされたのち、仙台市、町田市を経て2015年から多摩市に住んでおられます。2015年2月に「合同会社ライフイズ」を立ち上げ、「訪問看護リハビリステーションラフ」、「こどもデイサービスラフ」を開設されています。

影近さんのお仕事のテーマとなっている”インクルーシブな地域づくり”とは、『「関わる全ての方の自己実現と笑顔の為に」〜重度の障害を抱えて生まれたお子さんも、ターミナル期の方であっても、誰しもが地域に溶け込んで暮らし続けられる地域社会を目指す』と会社の理念でうたわれています。また、社名のライフイズは、みんなのLife is…に続くことを見つけ出し、ともに目指していきたいという想いが込められています。

「訪問看護リハビリステーションラフ」は24名の職員で、子供から高齢者、難病、精神科、ターミナルまで、どのような状態の方にも対応する「訪問看護ステーション」として、『地域で暮らしたい全ての人にサービスを提供する』ことをモットーとされています。

「こどもデイサービスラフ」は9名の職員で、『重症児と家族が地域に溶け込み、様々な関りを持ちながら主体的な生活を営むきっかけとなる笑顔あふれる居場所』がキャッチフレーズです。どちらも「ラフ」=laughのとおり、大声で笑いあえる施設にしたいという願いが込められたネーミングです。

影近さんは社会保障事業を続ける中で、一人一人の様々な困りことに対しサービスを提供している中で、「同じようなことで困っている人が多い」と気づき、地域全体として解決することが必要ではないかということに思い至ります。しかし、公的な社会保障サービスには制度上の制限が多く、余暇的な取り組みは認められないとか、社会保障費でやることには限界があると感じ、「地域の力」や「コミュニティビジネス」としての可能性を探っておられます。

インクルーシブ社会の実現に向けた地域活動とはどういうものか、例えば、「医療的ケア児」「重症心身障害児」と呼ばれるような子供たちが、子どもらしく遊べる場が少ない、また、そういう子供たちを地域で育てていくハードルや家族の負担感が異常に高いといった課題を解決していきたいが、…………こういう個人的なニースに対しても、地域の多様な力で受けとめ、解決していくことのできる社会ということではないでしょうか。

影近さんは、「インクルーシブ社会」とは、”障害の有無や世代・背景を飛び越えて、同じ地域で、様々な関わりを持ち、溶け込み合い、尊重されながら、共に笑顔で暮らし続けられる社会”と言われています。

影近さんが実際に取り組んでおられる活動の一部を紹介していただきました。「青空イベント」は、「屋外遊び」の機会が少ない子供たちや、公園デビューに恐怖心を抱くお母さんたちも、皆で自然に楽しむ場づくり、参加した全ての人が楽しいイベントです。

「メルティング・ダイニング」は、胃ろうや鼻からチューブを通して食べる方も、 食という楽しい場で自然な関わりが生まれる様、一緒に食卓を囲み“食事”を楽しむ場づくりです。

「インクルスポーツクラブ多摩」は、スポーツ(パラ・ニュースポーツ等)を通じて、 障害の有無を問わず、より自然な形で双方の理解や交流を行うもので、多摩市在住のボッチャ元日本チャンピオンを中心に活動されています。

「私たちの事を私たち抜きで決めないで(Nothing About us without us)」 という「
障害者の権利に関する条約」の合言葉が心に残りました。

来年の4月からは、諏訪商店街の一角、まちせんのかっての活動拠点だった「すくらんぶる〜む」を引き継いで、生活介護事業所を開設しようと準備されています。そこでは、特別支援学校を卒業した重症児(者)に、卒業後も地域との関わりの中で過ごしてもらえるような、新しい形での生活介護事業所を目指しておられます。

多摩市内には2か所の重度障害者対応の生活介護事業所がありますが、来年度の受け入れは困難だそうです。にもかかわらず、桜ケ丘特別支援学校の卒業まじかの生徒は多数存在するということで、家族や学校や行政からの希望や要望が多く、そのニーズに応えていきたいという気持ちで決心されたとのことです。

あえて、商店街に開設することで地域に溶け込み、商店街の活性化にも一役買い、商店街を盛り上げる1市民として、様々な人と自然な形でのかかわり方を見出したいという意欲で開設の準備を進めておられます。

事業所の新しい形とは、………地域のたまり場となるような「駄菓子屋」、気楽に集いたくなるおしゃれなスペース、周りの人が興味を引くようなワクワクする場所、2階には地域の人や利用者、職員の交流ができるカルチャーセンター等々、様々な人が集える工夫をしていきたいと夢を抱いておられます。

だれでも寝転がって遊べる杉のむく材の床は、まちせんがつくった時のまま利用していただけるようで、かって障害児のかたの放課後の活動に利用していただいたこともあるので、縁のつながりも感じます。

施設のオープンが楽しみな一方、参加者の方からは運営資金や活動費を心配する声もあり、クラウドファウンディングの利用の可能性も考えてみたらというご意見も聞かれました。その時には、きっと多くの皆さんの協力も期待できそうな気がします。

今回、影近さんがかかわっておられる「たましめし応援隊」の話も聞かせていただきましたが、紙面の都合で残念ですが割愛させていただきました。その他、影近さんのお仕事やお考えは、ライフイズのHP で知ることができます。

https://lifeis-llc.com/

※このまとめの作成に際し、障害の”害について、ひらがな表記にしていたところ、影近さんから”害を個人の問題ではなく、社会の問題として捉えるという「社会モデル」の観点から考え、解決していく時に、害を平仮名で隠すのではなく、社会に問題がある”障害”という意味合いででしっかりと漢字表記していきたいというご意見をいただき、漢字表記としました。

(2020.9.21[Mon]記載)


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