多摩ニュータウン
多摩ニュータウン・まちづくり専門家会議
 
E-mail


まちせんトップ

木曜サロン

記録・報告

%bnindex%...more

2019年09月分

第146回(2019年9月26日)

■テーマ:「 災害からの回復力のあるコミュニティをつくる—多摩地域でのアクションリサーチから—」
■講師: 市古太郎(いちこ たろう)さん(首都大学東京 都市政策科学科 教授)

市古先生は首都大学東京災害復興・都市防災研究室で,気仙沼階上地区での住宅移転+集落生業現地再建の支援活動を「寄り添うプランニング」として実践されてきました。今回のお話は、東北や熊本支援で見えてきた教訓を踏まえ「回復力のあるコミュニティをつくる」という視点から八王子市上柚木地域青少年育成会での学校-地域防災活動,および絹ヶ丘一丁目町会でのアクションリサーチと、そこから考える首都直下地震、多摩内陸地震へのそなえというお話でした。

市古先生の実践活動を紹介するときの重要な概念として「事前復興」と「リジリエンシー」があります。これらを理解するために、雑誌等に先生の寄稿されたものから独断で概要を紹介します。『リジリエンシーとは「すみやかにしなやかに回復する能力」を意味する。リジリエンシーが復興の重要概念となったのは、発災後の「しなやかな回復」プロセスに加え、発災前に培われた回復力を視野に入れた、事前と事後をつなぐ理論としてである。コロラド州立大学のKathleenTierneyによると、発災前までに培われる人々の被害回避・回復能力と発災後の状況機会に応じた回復力は通底するという。事前復興とは、リジリエントな(回復力のある)コミュニティをつくることといえる。 』

南大沢上柚木地区は多摩ニュータウンの中にあり、集合住宅が中心の地域で自治会は未組織で団地管理組合が防災訓練を実施している程度、一方絹ヶ丘地区は1970年代後半に造成された民間の戸建て住宅団地で、自治会活動も活発に行われている地区です。

上柚木地区では東日本大震災までは地域としての防災活動は特になかったそうですが、震災時には20%の家庭で家族が帰宅できないという事態になり、女性と老人と子供ばかりになったため、PTAを中心に地域防災訓練を実施するようになったということです。その後、ある防災セミナーで市古先生の話を聞いた方との交流から、実技中心の防災訓練から、グループトークなどによる頭上訓練を行うこなうようになり、様々な問題や課題を共有できるようになってきた。そういう過程で、お父さんを巻き込んだ防災訓練や中学生との連携などへと活動が広がっているということです。

また、絹ヶ丘地区は長年、熱心に防災訓練にも取り組んできていましたが、「防災マニュアルを」という理事会の問題意識から首都大学との連駅が始まり、フィールドワークやグループトークを繰り返しまち点検も実施しています。その後のグループトークのテーマとして、「安否確認をした後どうするか?」「高齢者など、在宅での自主避難者に対するサポートは」といった話し合いもしているということです。

市古先生から、アクションリサーチを通じての多摩地域の防災のキーワードして3つのポイントが提起されました。

一.都区部とは地震被害の姿が異なってくる。区部では倒壊・火災が主となるが、多摩地域ではそれらのほかに、造成地における残存緑地の土砂災害や帰宅困難者が多く発生することからくる生活不安への備えが必要となる。

二.都区部を主体とした防災都市づくりを基本としつつも、それと異なるソリューションが求められる。生活回復を主テーとした「事前生活再建ワークショップ」また、「ハザード地地域における立地制限を考慮した土地利用計画」など。

三.郊外住宅地としての困難さと同時に利点を生かす工夫。一斉分譲・同時入居に伴う超高齢化や単身高齢者世帯の増加、単一な地域コミュニティ。空き部屋、空き地、空地の存在と活用など。

質疑応答の時間では、地域と公共との役割分担、避難所の運営、単身高齢者の問題、 大規模造成地の不安などの身近な問題意識から、さらには戸建て住宅団地での安全な場所への住み替えのニーズとか、基盤の整った地震に強い多摩ニュータウンは都区部からの避難者の受け入れも考えなければいけないといった様々な意見交換ができました。いろいろな方との意見交換や情報交換を通じて、防災に関する知識や問題意識が深まってくることを実感できたサロンでした。

市古先生、大変お忙しい中を貴重なお話を聞かせていただき、また、始前の時間には、直前に視察にいかれた伊豆大島の台風15号による被害実態の現地写真や話も聞かせていただき、ありがとうございました。

(2019.9.30[Mon]記載)


Powered by HL-imgdiary Ver.3.00


永山ハウス
コーポラティブ住宅
(c)多摩ニュータウン・まちづくり専門家会議