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2019年07月分
■テーマ:「近年の公共建築の傾向:庁舎建築」 ■講師: 河田 健(かわた たけし )さん(株式会社佐藤総合計画 東京第1オフィス第1設計室 プロジェクトリーダー)
河田さんは兵庫県伊丹市の生まれで大学卒業後佐藤総合計画大阪事務所に勤務。3年目に阪神淡路大震災に遭遇されます。その後東京勤務を経て2011年に仙台転勤、その年に東日本大震災に遭遇と、大きな地震を2度も体験されています。運よく2度とも直接的な被災はなかったとのことですが、なかなか普通の人ではめぐり合うことのない体験をされています。
佐藤総合計画は早稲田大学の教授であった佐藤武夫氏が設立されたアトリエ事務所から出発しており、戦後の庁舎建築をはじめとした公共建築を多く手掛けてきていることから今でも公共建築が主流だということです。佐藤武夫氏の「建築は万人のものである。作者の強い個性を主張しすぎることのないよう、むしろ控えめに、風土や市民の演ずる舞台の引き立て役であるべき」という考え方が、いまでも会社のDNAとして引き継がれているのだそうです。自己主張が強い建築界のなかで、とても共感できるいい言葉ですね。
佐藤武夫氏の代表作は早稲田の大隈講堂が有名ですが、佐藤総合計画としては東京ビックサイト、多摩市内では多摩市立第二小学校、聖蹟桜ヶ丘のヴィータなどがあります。
河田さんご自身も公共建築を中心に手掛けれており、主なものに、東京ビックサイト南展示場、ナショナルトレーニングセンター、山口県の維新百年記念公園陸上競技場などの体育施設、秋田県鹿角市のコモッセ鹿角(図書館、ホール、子育て支援施設)、ルミエール府中(府中市中央図書館)など文教施設があります。
庁舎建築はまちづくりと深い関係がありますが、最近の庁舎建築の大きな変化はICT技術の進歩だそうです。(ICTとはInformation and Communication Technology(情報通信技術)の略で、通信技術を活用したコミュニケーションを指します。情報処理だけではなく、インターネットのような通信技術を利用した産業やサービスなどの総称です。)
これまでの庁舎は、窓口の長いカウンターと長椅子の待合スペースが定番ですが、インターネットやコンビニでも手続きはできるようになり、窓口では発券機と書類の発行だけで済むようになります。そうなると長いカウンターや待合スペースは縮小していきます。 一方相談事は増えてくる傾向にあり職員はカウンターから外に出て、市民に直接説明することが増えてくるだろうということです。
福島県の須賀川市庁舎、会津若松市庁舎、佐賀県武雄市庁舎など、写真を見せていただきながら実際の事例を教えていたきました。閉庁後にはオフィス部分とのセキュリティーを分離することで、ロビー空間は市民に開放でき、机やいすもいつでも利用できるようにすることができるようになります。高校生や中学生が学習に使ったり、市民活動の場として利用したりといろいろな使い方ができそうです。
習志野新庁舎はグッドデザイン賞も受賞されていますが、地形の高低差を生かした緩やかな勾配の大階段や庁舎を巡るロビー空間などを設け、様々なイベントやコンサートなどにも活用されているということです。市庁舎は習志野高校の跡地に建設され、市民に親しまれていた元のグラウンドは駐車場と一体的な広場として残し、その空間を使ったお祭りなども催されているようです。
小金井市庁舎はまだ基本設計の段階だそうですが、福祉会館と併設される市庁舎のロビー空間は市民に開放される空間として検討されているそうです。 栃木県下野市庁舎、青梅市庁舎などの事例も紹介していただきました。
丸亀市庁舎では、丸亀城と中心市街地、丸亀港を結ぶ軸線上で、人口減少に悩む地方都市の中心市街地のまちづくりに市庁舎と市民活動交流センターをどう生かしていくかという提案をされています。
多摩市でも市庁舎の建替えが議論されており、市民活動との一体化やICT化という流れの中で庁舎の建築も考えてほしいという河田さんの要望でした。
河田さんは多摩中央図書館の設計にも携わっておられますが、市民ワークショップや説明会に参加された方からは、立地条件をとてもうまく処理されて市民のコミュニティがうまく回っていくように思うという感想もありました。ICT化という流れは図書館でも生かされていくものと思いますが、私たち市民も、せっかくできる新しい図書館やパルテノン多摩、中央公園などの公共資源を上手に使いこなしていく責務もあるのだと、改めて認識しました。
(2019.7.21[Sun]記載)
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