多摩ニュータウン
多摩ニュータウン・まちづくり専門家会議
 
E-mail


まちせんトップ

木曜サロン

記録・報告

%bnindex%...more

2019年01月分

第142回(2019年1月17日)

■テーマ:「多摩ニュータウンにおける沿線価値向上の取り組み」
■講師:澤 昌秀(さわ まさひで)さん(京王電鉄渇線価値創造部企画担当課長)

 京王電鉄は昨年2018年秋に京王プラザホテル多摩2階に、サテライトオフィス「KEIO BIZ PLAZA」をオープンしました。それ以前にも聖蹟桜ヶ丘駅前にサービス付き高齢者向け住宅「スマイラス聖蹟桜ヶ丘」を建設するなど、最近の京王電鉄の多摩地域における事業展開に注目していました。
 2017年11月の木曜サロンでは東急電鉄の沿線地域のまちづくりについて話をしていただきましたが、多摩ニュータウンがおひざもとの京王電鉄の話を聞かないのは不公平だということで、京王電鉄にもお話を聞く機会を狙っていました。今回ようやく、実現することになり、澤昌秀さんに来ていただくことができました。

 京王電鉄は1910年設立の京王電気軌道(株)という路面電車が始まりで、街ができていたところをつなぐということから出発しているので、他の電鉄会社のように鉄道事業者が主体となって行う沿線の都市開発とはあまり縁がなかったということです。土地資産を多くは持っていないため、ソフト面で頑張ることで生き残りを図ってきたのだということです。
 澤さんによると京王電鉄という会社は石橋をたたいて壊しているような社風の会社ですが、生き残るために過去にとらわれない事業も検討し始めているのだそうです。昨年から運行している京王ライナーも大変好評のようで、新宿・多摩センター間24分というのは社内でも衝撃的だったということですが、他の列車に影響しないで増発で対応しているため混雑率が上がることもなく、時間距離の大幅な短縮は多摩ニュータウンのイメージアップに大きく貢献していると思います。

 2018年3月には多摩動物公園駅では親子で楽しめる全天候型の遊戯施設「京王遊びの森 HUGHUG」がオープン、調布駅周辺では立体交差化事業を実施し2017年9月に商業施設「トリエ京王調布」を開業するなど、京王電鉄の事業は人が集まる街、楽しめる街、住みやすい街へ向けた取り組みということが共通する理念になっているようです。
 また、列車位置がリアルタイムにわかるという「京王アプリ」は、事故時など駅員に聞くより正確で速いということです。大田区蒲田では1棟まるごとの民泊マンション「KARIOKAMATA」をやっているが、将来的には沿線への展開もにらんでのことだそうです。沿線の情報発信サイト「街はぴ」やイメージキャラクター「プラットガール」による沿線の魅力紹介など、ユニークな取り組みも次々と始められているようです。

 多摩市とは包括連携協定を締結し、京王ほっとネットワーク移動販売や多摩ニュータウン魅力実感イベント、市内181の橋を観光資源として活用しようするwebサイトおよび「たまのはしフォトコンテスト」、多摩市・URとの3者による「たまNEWプロジェクト」の第1弾事業として首都大学東京の学生のデザインによる多摩ニュータウンの魅力を沿線外に伝える「まちのポスター」などの事業にも取り組んでいます。
 多摩ニュータウン周辺においては、ほかにも、子育て支援の取り組みとして認可保育所「京王キッズプラッツ」、事業所内保育所「さくらサークル」や高齢者支援事業として、介護付有料老人ホーム「チャームスイート京王聖蹟桜ヶ丘」、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)「スマイラス聖蹟桜ヶ丘」を建設しています。桜ヶ丘のサ高住では近隣の桜ヶ丘団地からの転居もありますが、今の高齢者は比較的お金持ちが多く、築いてきた資産を自分の代で手放したくないというお気持ちの方が多いということで、売却事例は予想より少なかったようです。

 これまでは定住人口を増やすことに重点を置いてきたが、これからは交流人口を増やし、人が歩いている街を目指すということを志向しているということです。前述のサテライトオフィス「KEIO BIZ PLAZA」は93名定員のところ70名の入居と順調な滑り出しだそうです。大学の先生や都心に通うビジネスマンなどの入居もあるといいます。電鉄会社が職住近接のサテライトオフィスをやるのは利用客の減少にもつながるのではないかという質問もあるそうですが、テレワークやホームオフィスなどの新しい働き方が広がる中で、少しでも街中に出てきてもらって、地域にお金が回るような仕組みも必要だということで決断したそうです。サテライトオフィス入居者が優先的に利用できる企業主導型保育所「京王キッズプラッツ多摩センター」を、2019年6月に高架下に整備することになっているそうです。

 来月には諏訪・永山地区で自動運転のバスの社会実験にも取り組まれます。さらに桜ヶ丘の独身寮のリノベーションによる留学生と日本人学生のシェアハウス、ほかにも生活支援事業やリノベーション事業「Rebita」、メモリアルホールなど実に多様な事業に取り組んでおられることを知りました。京王電鉄は意思決定が遅いんだと澤さんは自嘲気味に話されますが、大変しなやかで、したたかな会社だと大いに見直しました。

 会場からはリニア開通に伴い、どういう展開を考えているのかという質問もありました。これに対して、多摩ニュータウンの中での各エリアの位置付けの議論に留まるのではなく、多摩エリアという広域の中での多摩ニュータウンの位置づけをしっかりとつくって、品川、東京への利用客を橋本に引っ張てこれるよう、行政にがんばってほしいという言葉もありました。

 澤さん、お忙しいなかありがとうございました。ぼくとつとした話しぶりの中に、ユーモアや時に小気味いい本音も混じった、とても楽しい時間でした。

(2019.1.23[Wed]記載)


Powered by HL-imgdiary Ver.3.00


永山ハウス
コーポラティブ住宅
(c)多摩ニュータウン・まちづくり専門家会議