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2018年01月分

第136回(2018年1月18日)

■テーマ:「永く快適に安心して住み続けられる家のつくり方」
■講 師:迎川利夫(むかえがわ としお)さん (相羽建設(株)常務取締役)

 2016年(平成28年)4月に「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(建築物省エネ法)」が施行され、2020年には新築住宅について省エネ基準が義務化されることになっています。また、新築住宅については2020年にはZEH(※1)を標準化するものとしています。長期的にはパリ協定に基づいて2050年にCO2を80%削減するため、LCCM(Life Cycle CarbonMinus)住宅(※2)の普及を目標としています。

 相羽建設の木造ドミノ住宅は、これらの国の省エネ基準を先取りした住宅です。現在、LCCMの認定を受けた住宅は全国で53件あり、そのうちの約1/3、17件が相羽建設の木造ドミノ住宅だそうです。

 木造ドミノ住宅とは、コルビジェの提唱した、ドミノシステム 〜最小限の柱と階段と自由な平面で構成される構造〜からとったネーミングで、東京都が、合理的な生産システムを用い、質と広さを確保しながら市場価格より3割程度安価に戸建て住宅を供給することを目的として公募した「東村山市本町地区プロジェクト」に建築家の野沢正光氏の設計で相羽建設が応募し、採択されたことから始まりました。

 ソーラータウン府中の事例から、木造ドミノ住宅の特徴や相羽建設が進める住宅づくりを紹介していただきました。ソーラータウン府中は、都営住宅の跡地で東京都が公募した「長寿命環境配慮住宅モデル事業」のコンペで採択された16戸の戸建て住宅団地です。木造ドミノ住宅の大きな特徴は、スケルトン+インフィルによる大黒柱と外周壁だけのシンプルな構造と内部空間の自由な可変性にあります。シンプルな基礎はコンクリート量を2割削減し、材料も少なく工程も楽になるということです。

 構造設計は山辺豊彦氏で耐震等級は最高の「3」をクリアしているそうです。間取りは自由に変更できるため、子供の成長や世帯構成の変化にも対応でき、中古住宅としてもスケルトンは70年は持つため、リフォームやリノベーションにより使い続けることが可能です。また、スケルトンを単純化することで、一般の戸建て住宅と違い電気、給排水などの配管をメンテナンスしやすくなっています。

 もう一つの大きな特徴は、ゼロエネルギーの実現するための徹底した省エネ、創エネが取り入れられていることにあります。外壁や開口部の高断熱性能、OMクワトロソーラーによる太陽の光と熱を活用した、暖房、発電、給湯、換気のハイブリッドソーラー、日射や自然の風を取り入れるための設計上の工夫などです。

 そのほかにも、ソーラータウン府中では、各戸が敷地の一部を共有地として提供することで、団地内に風の道となる園路を設け、コミュニティ空間として活用され防災設備なども設置されています。さらに園地を緑化し土にすることで、夏は涼しく冷房費も抑えられる効果があるそうです。

 快適な室内の温熱環境は健康寿命を4年延ばす効果があるそうで、日本ではヒートショックや熱中症など室内で亡くなる人が交通事故の3倍になっているそうです。また暖かい住宅にすることで、様々な病気を予防することもでき、医療費を削減する効果もあります。欧米では冬季の室内温度を一定以上に保つように規制されているそうです。まだまだ、日本では住宅の快適性に対する認識も法制度も遅れているようです。

 今回のお話は、多摩ニュータウンの集合住宅にとっても大変参考になるものだったと思います。外断熱や省エネ・創エネの必要性について再認識するとともに、普及に努めることの重要性を改めて感じたひと時となりました。

※1 ZEH(ゼロ・エネルギー住宅、ゼッチ):外皮や設備の省エネ化により、日常の一次エネルギー消費量を削減し、その消費量を太陽光発電等の創エネルギーとあわせ計算上「ゼロ」にする住宅。
※2 LCCM住宅(Life Cycle Carbon Minus住宅):住宅の建設時からリフォーム、廃却までの生涯にわたるエネルギー消費量を「ゼロ」にする住宅。

(2018.1.24[Wed]記載)


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