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2017年11月分

第135回(2017年11月16日)

■テーマ:「新時代に向けた大都市近郊の郊外住宅地のあり方に関する潮流〜横浜市と東急電鉄による『次世代郊外まちづくり』〜」
■講 師:松本隆之(まつもと たかゆき)さん
(東京急行電鉄株式会社 都市創造本部開発事業部 地域開発部開発担当 課長)

 東京圏に人口が集中した高度成長期に、東京近郊の鉄道沿線には大規模な住宅団地が数多く作られてきました。これらの郊外住宅地は、いまどこでも住民の高齢化、少子化、住宅やインフラの老朽化といった老いの問題を抱えており、自治体、住民、民間デベロッパーが三すくみ状態にあると松本さんは言われます。

 東急電鉄が開発した、たま田園都市は高級住宅地として名高いエリアですが、例外なく同様の問題を抱えてます。東急電鉄と横浜市は2012年に「次世代郊外まちづくりの推進に関する協定書」を締結、産・学・公・民が連携してまちづくりに取り組んでいます。

 東急電鉄のルーツは、99年前に渋沢栄一が洗足や田園調布で宅地開発を始めた田園都市株式会社という不動産会社だったとのこと。電鉄会社がまちづくりに熱心に取り組んでいるのはこのDNAがあるからということです。たま田園都市は64年前に当時の社長である五島慶太氏が構想を打ち出し、まちづくりと鉄道の両輪で開発してきた事業で、面積500ha、計画人口60万人と多摩ニュータウンを超える規模です。

 2011年に横浜市との協働で研究会を立ち上げ、地元住民を巻き込んで街づくりを進めようと2012年に協定を締結し、たまプラーザ駅を中心にモデル地区を設定して事業が始まりました。モデル地区での全世帯アンケートや5回の住民ワークショップ、活動のヒントや事例を学ぶための8回にわたるまちづくり講座(たまプラ大学)などを経て、2013年にまちづくりのビジョンとなる基本構想が策定されました。基本構想では、5つの基本方針と10の重点施策を打ち出し、2013年から5年間、各年度ごとにいくつかのリーディングプロジェクトを設定して具体的な活動にとり組んできています。詳細の内容は下記のHPでご覧ください。↓
http://jisedaikogai.jp/

 「WISECITY」(賢者のまちというような意味あいだそうです。)をキーワードとして、次世代につなぐ持続可能なまちをを目指そうと、具体の姿としてコミュニティ・リビングの実現に向けた取り組みを紹介していただきました。空き家や施設の空きスペースの活用、マンションのリノベなどにより、地域のなかに居場所を作っていこうという取り組みで、箱のまえに、まず活動をつくることから始めようとリビングプロジェクトとしてイベントや社会実験をこの5年間取り組んでこられたそうです。2017年度からは、さらに沿線の地域に展開していこうと、横浜市と協定のまき直しを行ったということです。

今後の課題として、
1.複数の行政間で都市政策も取り組みの温度差もあるなかで、駅ごとに特性の異なる沿線地域への横展開をどう進めるか。
2.待ったなしの少子高齢化の進行に対し、住民相手の手間ひまのかかる取り組みを段階的に進めていくことの難しさ
を指摘されています。

 電鉄会社として混雑緩和や輸送力の拡大といった取り組みに加え、職住近接のためのサテライトオフィスや拠点駅における職住遊の融合といった、郊外住宅地をいかに魅力あるものにして、新たな住まい手に選ばれるための具体的な事業展開も図られているということです。横浜市や他の民間企業との連携など、多摩ニュータウンにとってはややうらやましい話もりますが、たま田園都市と多摩ニュータウンでそれぞれの取組を参考にしながら、郊外住宅地としての課題に向き合っていきたいものです。

2017.11.26[Sun]記載)


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