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2017年03月分

第131回(2017年3月16日)

■テーマ:「将来へ向けた団地に必要な活動とは」
■講 師:花牟禮 幸隆 (はなむれ ゆきたか)さん(エステート鶴牧4・5団地管理組合)

 エステート鶴牧4・5団地は1982年3月竣工、築35年の29棟356戸という大規模団地で、2013年には外断熱改修を実施しています。花牟禮さんは建築の専門家として管理組合において、団地の維持管理に主導的な役割を果たされるとともに、団地の管理運営の組織づくりや団地の将来ビジョンの作成なども積極的に取り組んでおられます。今回は花牟禮さんが取り組んでこられた、団地の環境改善に向けた様々な活動についてお話を伺いました。

 印象に深く残ったのは、20年後、30年後の団地の将来像を描きながら、そこに向かって大規模修繕や日常の維持管理を明確な目標のもとに進められているということです。氏が関わってこられた2回目の大規模修繕が終わった直後に、すでに第3回目の大規模修繕の費用が大きく膨らむことを見越して積立金の見直しを実施されています。また、理事会と諮問組織の関係を見直し、個々の組織がばらばらに活動するのではなく、横断的に総合的に団地環境の維持・向上を検討できる組織化を目指して、「団地整備検討委員会」という専門的な問題を総合的に検討する機関の設置を進めておられます。

 話しがやや専門的になりますが、エステート鶴牧4・5団地は、排水管が床下配管(排水管がスラブを貫通して階下の住戸の天井裏に配管されていること)となっていて、排水管の更新が大変難しくなっている構造の団地です。将来的に排水管の維持管理をしやすくするためには、床上配管に切り替えていくことが必要となります。そのために、各住戸の水回りのリフォームの際に、床上配管に切り替えが可能となるような構造にしてもあれるよう、各住戸タイプ別に指針となるモデルプランを提示し全戸に配布されているということです。

 団地の環境改善を進めようとすると、ベースとなる図面が必要となります。残念なことにニュータウンの団地では、団地の竣工図が紙ベースのものしか残っていないのが大半です。このため花牟禮さんは相当の費用をかけて、図面の電子データ化を行い、植栽図をベースに上下水道、電気、ガス等の配管網を調査して重ね図を作成されています。このような基本的な情報をしっかりと把握しているかどうかが、将来の環境改善を進めていく上では重要な要素になります。

 お聞きしたお話の一部しか紹介できませんが、このように、花牟禮さんの団地では、将来に向けて必要なことを地道な作業で積み上げ、それを団地住民と共有していくという努力を行っておられることがわかります。第3回の大規模修繕で外断熱改修を実現されましたが、その後も、今後の環境整備に向けた、団地の将来像の検討のために、多岐にわたる内容について、かなり膨大なアンケート調査も実施されています。

 話は、さらに団地環境から、団地の外部の環境を含めた「地域ブランド」を高め、資産価値の一層の向上を目指すという方向へと広がります。地域の環境良さを住民が認識し、自らの居住する地域、団地に誇りと愛着を持てるように、専門家として情報を提供し、住民とともに価値を共通の認識として持てるような活動にまで膨らんでいるようです。またより豊かな住まい方の可能性をアピールするために、リフォームやリノベーションの事例の紹介なども考えられているということです。

 団地の環境改善に取り組もうとする管理組合にとって、とても参考になる話が多かったのではないでしょうか。花牟禮さん、大変お忙しいところ、事前の準備も大変だっと思います。ありがとうございました。

2017.3.18[Sat]記載)


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