■テーマ:「諏訪2丁目住宅建替えから考える団地再生への課題」 ■講 師:山田尚之(やまだ たかゆき)さん(鳩ノ森コンサルティング代表取締役)
諏訪2丁目住宅の建替事業について、仮住まい期間中から建替え後の新生活までの間に3回実施したアンケート調査がまとまり、この機会に改めて建替事業について考えてみようという趣旨で、昨年11月に続き連続企画として開催しました。
講師の山田さんは、諏訪2丁目住宅建替事業のコーディネーターを務められた方で、萩中住宅を始め多くの団地の建替事業を手がけられました。現在は鳩ノ森コンサルティングを設立され、府中市内を始め首都圏内の建替え事業の推進に取組まれています。
我が国の団地を取り巻く状況をみると、築後45年経過する団地は現状の291団地から10年後に約5倍の約1,500団地、20年後には約10倍の3,000団地となります。しかし、今までの建替え実績のペースでは増え続ける対象への対応は限られます。加えて高齢化が一層進行し、管理組合の弱体化や個人負担力の低下など事業化がより困難になる状況にあるという現状認識が提示されました。また、近年の工事費上昇の影響で権利者が無償で取得できる床が減り、郊外部では、従前の面積を確保するには1千万円〜1千5百万程度の負担を覚悟する必要があるとのことです。
自己負担を伴う建替事業の合意形成では、個別同意を積み重ねるのではなく、問題解決のシナリオや具体策への理解、組合員相互理解を深めるなどの取組みを通じて培われる連帯感の高まりが、集団での合意形成をはかるポイントとなるとして、諏訪2丁目の[建替え実現決議実現委員会]や[号棟別懇談会]の取組みが紹介されました。特に、号棟活動などのプロセスがコミュニティーを再生する「場」となり、問題意識の共有や組合員の一体感型が高まり、合意形成が進むことになると、実践経験者ならではの説得力あるお話でした。
今後の団地再生の方向性として、市場環境の変化を踏まえて保留床処分に頼らない一部建替えや段階的建替えが円滑にできる法整備、各戸の住戸面積を減らして個人の負担を軽減させるなど考え方を披露されました。特に課題となる高齢者などの負担軽減の方法として、くつろぎの空間を共有することで各専用部分を減らす「コミュニティー住宅」を計画に盛り込むこと、存命中の借入金の支払いを利子だけとする「高齢者向け返済特例」の活用など具体的な紹介もありました。
多摩ニュータウンでは旧諏訪2丁目住宅のように50u未満の住戸は初期入居の地域に限られますが、強調されていた高齢者を中心とした合意形成上のポイントについては、建替えによらないリノベーションなどの再生手法においても共通点も多いと感じました。
山田さん、お忙しい中を大変貴重なお話をありがとうございました。(記録:F.T)
本講演の基となる諏訪2丁目住宅マンション建替事業アンケート分析等報告書「多摩ニュータウン新時代の鼓動」を頒布中です。詳しくはこちらをご覧ください。(2017年3月22日追記)
(2017.2.20[Mon]記載)
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