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木曜サロン

記録・報告

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2013年07月分

第91回(2013年7月18日)

【テーマ】:マンションの建替えをめぐる諸問題〜千里ニュータウンでの最高裁上告棄却二事件を中心に〜
【講師】藤木良明(ふじきよしあき)さん(NPO法人 山村集落再生塾主宰、一級建築士)
 「マンションにいつまで住めるか」等の著作でも有名な藤木良明さんをお迎えし、区分所有法上の建替え規定の変遷や建替え成功事例の特徴、最高裁で建替え決議が争われた2事例(新千里 桜ヶ丘住宅、千里桃山台第二)についてお話頂きました。

 平成14年の区分所有法大改正により、それまでの建替え要件であった「老朽・損傷・一部の滅失」や「維持・修繕に過分の費用が要する」といった要件や議決権要件が大幅に緩和され、さらに「建替え円滑化法」の制定により、マンションの建替えが促進されてきました。

 この法改正と前後して、建替え決議を巡って最高裁で争われた二つの事例を紹介していただきました。新千里 桜ヶ丘住宅(H8年建替え決議、築29年目)では、「老朽」と「費用の過分性」の要件不在を理由に建替え決議の無効が主張されましたが、最高裁で棄却され、非賛成者の明け渡しに至ったそうです。また、千里桃山台第二(H17年建替え決議、築22年目)では、主に建て替え決議の進め方や売渡請求権行使の不当性、財産権保障に関する違法性等について争われましたが、非賛成者の主張は棄却されたそうです。いずれもバブル期に建替え計画が持ち上がり、全員合意から法定決議に切り替えての建替え決議がなされ、住民トラブルにまで発展した事件であり、建物の老朽化ではなく「経済的ものさし」で外圧により誘導された建替えと言えます。
 
 この二つの事件や他の建替え成功事例に共通するポイント(容積率のゆとり、交通の至便性、戸数、事業協力者の手腕、等々)についても解説して頂き、大変勉強になりました。また、建替え検討が長引き適切な修繕がなされずに放置された事例や50年間全く維持管理されずボロボロになった建物を引用しながらマンションの人為的な老朽化についてもお話し下さいました。

 人口が減る反面マンションストックは年々10数万戸増えていくという中で、今までのような等価交換率優先で行われる建替え施策には疑問が生じるという藤木さん。これからは余剰床から少しでも社会や地域、環境に還元すること、つまり個人財産のオープン化が求められるのではというご指摘がありました。

 最後に、公が私(個人)にどのように介入できるのか、私(個人)が公にどのように包摂されるのか、という問いを投げかけられ、大きな宿題をいただいたような気がします。廃村の茅葺古屋敷、田舎の田んぼの中にそびえ立つタワーマンションや無人化した高層マンション群、建築ドローイングの「スカイスクレイパー」(byピーター・クック)という100年前、現在、100年後の象徴的な写真をご紹介頂き、建替えも含め、あまりに深いマンション問題に個人としてどう考え、取り組み、何ができるのか考える良い機会となりました。

 今回の木曜サロンは、前回の諏訪2丁目建替えに引き続き、マンション建替えの話題を取り上げましたが、活発な意見が交わされ、大変盛況な回となりました。藤木さん、貴重なお話をどうもありがとうございました。(記録I.Y)

(2013.7.30[Tue]記載)


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