【テーマ】「足(たる)を知る」幸せ、「求められる」幸せ~本物の幸せを感じるために~ 【講 師】桃井和馬(ももい かずま)氏(写真家・ノンフィクション作家、多摩市在住)
桃井氏の語りは、『人のしあわせとは何か』を語り綴ったものだった。日本人の心に響かなくなった『暗闇』の価値。独り孤独に四国山脈を縦走する中で、夜に輝く動物の目の光。チベット仏教の聖地で見る星座に照らされた台地。そして宮島の建築に秘められた陰影の秘技を語り伝える語り部として登壇した。
多摩での語りは、世界を旅した桃井氏を聴く場としては物足りないものであったのかもしれない。粗末な、すくらんぶるーむの空間に大きな桃井氏の世界が飛来した。観客は固唾を飲んで聴き入っていたが、闇の深奥と静寂を同時に体験した後に、現実に引き戻された。
最近の桃井氏の書に『希望の大地』岩波新書がある。旅を重ねてきた桃井氏の近著として店頭に平置きされていたフォトエッセイであるが、『闇の中にこそ希望の光りはある』として3.11後の幸福論を語っている。凄まじい人の不幸の対極として幸せを求めている日本人の心に気付きを与える写真と言葉の問いかけに、思わず心緩むひとときがある。 すくらんぶるーむに齎した、一時の幸福に感謝。(記録T.A)
(2012.12.31[Mon]記載)
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