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2010年05月分

第57回(2010年5月20日)

【テーマ】デンマークのニュータウン開発―1960〜70年代の都市郊外の成長とその背景
【講 師】小山展宏 氏(早稲田大学理工学研究所嘱託研究員)

 今回は早稲田大学理工学研究所嘱託研究員の小山展宏さんをお迎えし、” デンマークのニュータウン開発 ―1960〜70年代の都市郊外の成長とその背景―”というテーマでお話を伺いました。2008年にはデンマークでの「多世代交流空間の研究」のお話をしていただきましたが、今回が2回目の登場です。

 デンマークのニュータウン開発を知るには、歴史的背景を知ることが重要である、ということで、まずは、12世紀のバイキングの時代から始まり、キリスト教勢力の台頭と教会による国家支配権の掌握、その後の王政への移行、周辺国との戦争の歴史、例えばコペンハーゲンが首都としては珍しく国境近くに位置するに至った経緯など、大変興味深く「デンマーク史」をうかがいました。

 16世紀ごろから要塞都市として“閉じた”都市として発展したコペンハーゲンも、産業革命やコレラの発生を背景に、19世紀には城壁を撤廃し都市の拡大、郊外の開発へと変遷をたどったとのことです。1960〜80年代は住宅供給のピークとなったそうですが、この時期に建設された郊外ニュータウンの事例を沢山ご紹介いただきました。また、この郊外ニュータウン開発の背景にはコペンハーゲン周辺に立地する工場の労働力としての中東からの移民向けの住宅供給があったとのことです。

 ニュータウン開発の変遷の中で、高層住宅中心の初期開発から低層住宅、コミュニティ重視の開発への移行、共生集合住宅の取り組み、郊外への拡大から近年の都心部の開発への転換など共通する時代の流れを感じます。また、デンマークの低所得層の移民が居住する多くの郊外ニュータウンの現在はスラム化が進み、郊外ニュータウンの「団地再生」が大きな課題となっている日本と異なり、デンマークの「団地再生」は人口の空洞化が進む都心部の古い中層集合住宅の再生を指すそうで、移民政策と住宅・都市政策が重なるヨーロッパ諸国の都市問題の難しさの一つを見ることができます。

 最後に、デンマークのニュータウン開発から多摩ニュータウンの抱える問題解決への参考点として小山さんが指摘されたのは、デンマークのコミュニティの在り方「ご近所同士の助け合い」です。日常的なパーティでの交流や小さなお困りごとの助け合いなど、人と人のつながりをいかに紡いでいくか、ということでまちせんで取り組んでいる活動などの名前も挙げていただきました。今後も活動の場の一つとしてデンマークとの関係を深めていかれる小山さんには、デンマークシリーズとして、またその後のニュータウンなどお話をお聞きしたいと思います。

(2010.5.31[Mon]記載)


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