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2017年07月分

第133回(2017年7月20日)

■テーマ:「外断熱の不思議?」
■講師:堀内正純(ほりうち まさずみ)さん(NPO日本外断熱協会(JAEI)理事長)

今回は、ロンドンの高層住宅火災でニュースでも話題となった外断熱のお話でした。外断熱は火災に弱いのか?この点については最後に触れることにします。

堀内さんは大学卒業後は北海道で住宅生協で住宅販売の仕事に携わってこれらたそうです。旭川の支店長時代に分譲マンションの結露・カビに対するクレームが多く、それに対応する過程で旭川のような寒い地域では内断熱では結露・カビに対応できないと実感し、外断熱を志向することになったそうです。そして、三菱化学の子会社となっていた地元資本の江本工業が外断熱の会社に衣替えするという時に、外断熱のできる人材ということで引っ張られたのが、堀内さんと外断熱の長い付き合いの初めだったようです。

江本工業の江本央(えもとなかば)氏は日本の外断熱のパイオニアとでもいえる人で、1999年に刊行された「日本のマンションにひそむ史上最大のミステーク」の著者の一人であり、この本は12万部を売り大きな反響をもたらしました。この本では、それまで日本のマンションは内断熱が主流だったのですが、欧米で採用されている外断熱では、結露は発生しない。欧米諸国では外断熱が常識であり、内断熱は非常識極まりないと考えられていると断罪しています。

さらに外断熱は結露やカビの発生を抑制し、そこから派生するダニやアトピー性皮膚炎などの問題からも解放される。さらにエネルギー消費量の抑制、ひいては地球環境への寄与も大きいし、コンクリートを外気から遮断するするため住宅の耐久性も増し、経済的にも大きなメリットがあるとし、外断熱への転換を促しています。

あまりにこの本の反響が大きく、従来の内断熱が結露の元凶だと悪者扱いされたということで、間違いだという指摘に対し、当時の建設省が坂本雄三氏に依頼して、雑誌「建築技術2001-10」に掲載されたのが、「RC造内断熱は結露するのか(史上最大の「濡れ衣」)」という反論記事でした。坂本氏は結露予測の難しさや内部結露の予測計算手法などから、必ずしも内断熱はやすやすと結露するものではないとしています。この記事が内断熱でも問題はないという安心感を業界に与えてしまったといいます。ただ、坂本氏はこの反論の掲載された次の号で、外断熱は優れた方法であり、内断熱はやむを得ない場合に採用する方法だと述べておられるということです。

今回の話は相対湿度と絶対湿度、結露に関する定常計算と非定常計算、非定常計算のシミュレーションなど、やや難解で解説困難な話が多く、詳細を報告できないのが残念で、なおかつまとめ役の私の能力不足を痛感します。

最後にロンドンの火災の話題です。イギリスでは住宅のゼロカーボン化を急速に進めており、そのあおりでやや性能の悪い外断熱住宅が生まれている可能性もあるようです。火災のあったマンションでは、ウレタンの断熱材に外側にアルミパネルを張ったもので、内部に空気層があり、これが煙突効果をもたらし大火災になったようですが、通常は、イギリスではある一定の高さごとにファイアストップ(燃焼防止帯)を設けることになっているそうで、それも行われていなかったということです。

欧米では、断熱材の延焼防止のために厳しい基準が設けられており、NPO日本外断熱協会においても、今回のロンドン火災を教訓に、燃焼防止帯、開口部の上部への防火区画の設置、断熱材のJIS火災試験のクリアなどの基準化を進めているそうで、国の建築研究所においても研究が始まっているようです。

2017.7.30[Sun]記載)


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