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2014年02月分

第97回(2014年2月27日)

■テーマ:フランス保護領時代のカサブランカと「20世紀モロッコ建築」
■講師:荒又美陽さん(恵泉女学園大学准教授)

 2月は荒又美陽さん(恵泉女学園大学准教授)をお迎えし、『フランス保護領時代のカサブランカと「20世紀モロッコ建築」』というテーマでお話していただきました。

 フランス保護領(1912年〜1956年)であったカサブランカでは、仏本国から都市計画のエリート専門家が動員され、工業地帯の設定や現地人とヨーロッパ人入植者居住地区の分離など、フランスとして初のゾーニングなどによる都市計画を実施し、その成果が後にパリ大都市圏の計画に反映されるという、フランス都市計画手法の実験の場でもあったとのことです。

 また、建築においては、アールデコ建築を取り入れている一方、モロッコの優れたタイルや漆喰細工を取り入れた公共建築物や現地の伝統的デザインを重視した街づくりを行っています。初代総督リヨテが、仏統治に対する現地からの反発を招かないような巧みな統治行政を行ったとのことですが、街づくり、建築物においても現地の伝統的技術の採用などが結果的に功を奏した面もあるのかもしれません。

 お話のもう一つの柱は、NPO団体「カザメモワール」の活動です。独立以降、長く負の遺産とみられていた建築物について、政府が2000年代からそれらの一部について「20世紀モロッコ建築」として文化財指定を行うようになり、「負の遺産」に対する認識、評価が変化している、そこに大きな役割を果たしたのが「カザメモワール」です。

 専門家を含んだボランティアにより運営されており、カサブランカの近代建築の調査、保護活動さらに「カサブランカ歴史遺産の日」というイベントの実施や建築物の案内なども行っています。ボランティアの建築物、街への愛着は大変強く“私の文化財のためのボランティア”という言葉が印象的でした。

 荒又さんは、このような遺産の再評価、認識の変化の流れについて、カサブランカの歴史観からフランスの植民地主義がここまで姿を消していいもか、という思いも持たれているとのことです。

 同じフランス統治のアルジェリアとモロッコの違い、また参加者からも発言があった本統治下にあった韓国、台湾との違いなど、歴史ある遺産をどのように評価し、後世に引き継いでいくのか、大変複雑な問題であると改めて感じました。

 残念ながら参加者がやや少なかったものの、懇親会は全員でテーブルを囲み、和やかに、また、話題も多岐にわたって楽しい時間となりました。街に熱い思いを持つボランティア「カザメモワール」の活動に刺激されて、多摩ニュータウンでも街案内ツアーを是非、との声も。

 荒又さん、貴重なお話をありがとうございました。日本からパリ経由でカサブランカまで15時間(?)、カサブランカへの旅の夢が膨らみました。

(2014.2.28[Fri]記載)


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